トーチカ囲いとは、将棋において金と銀を縦に重ねて配置し、高い守備力を発揮する特殊な囲いです。名称の由来は、戦時中に使われたコンクリート製の防御拠点であるトーチカに形が似ていることにあります。
この囲いは、振り飛車戦型で玉を自陣の左側、つまり右側に置いたまま、金と銀を縦に並べて守る構造が特徴です。角や飛車の筋からの攻撃に対して非常に高い耐久力を発揮します。
特に中盤戦以降、相手の鋭い攻めを受けきる力を重視する場面で有効であり、プロ・アマ問わず一定の評価を得ている囲いです。
トーチカ囲いの組み方、基本構造と配置例
トーチカ囲いは、以下のような形が基本になります。
- 玉将を6九に配置
- その上に6八金
- さらに7八銀を右上に添える形
- 必要に応じて7九に金を足し、強化
このように、玉の上に金、その隣に銀を置くことで縦の壁を形成します。まさに名前の通り、強固な防御壁を築くような囲い方です。
特に、相手の角や飛車による横・斜めの攻撃を受け止めやすく、守りに厚いのが魅力です。
より詳しい構えと配置手順については、以下の解説も参考になります。
ミレニアム囲い(トーチカ囲い)の形と長所|将棋研究
トーチカ囲いのメリット
- 角・飛車に強い防御力
金と銀を縦に重ねることで、斜めからの攻撃である角の利きや、横からの飛車による攻めにも高い耐久性を発揮します。 - コンパクトに組める
玉をそれほど遠くまで移動させなくても囲えるため、少ない手数で実用的な囲いが完成します。 - 守りに徹した構造
攻めを受け止める目的に特化しているため、防御重視の構想と非常に相性がよいです。受け将棋との組み合わせで真価を発揮します。
トーチカ囲いのデメリット
- 攻撃力が落ちやすい
守備に駒を多く使うため、攻めの駒が不足しやすく、カウンターに移行しにくい傾向があります。 - 機動力に欠ける
金銀が玉の上下に固まっているため、いったん崩されると修復が難しく、柔軟性に乏しいのが難点です。 - 玉の位置が危険になりやすい
玉が自陣中央に近いため、相手の攻撃が届きやすくなる局面もあり、バランスに注意が必要です。
トーチカ囲いが活躍する局面と相性の良い戦法
- 受け重視の中・持久戦型
相手の攻めを誘い、それを受け止めてから反撃するスタイルと好相性です。特にアマチュアの実戦では、相手の急戦をかわす戦略として有効。 - 振り飛車全般、特に四間飛車
四間飛車や三間飛車など、玉が右側に寄る形で採用されやすい囲いです。美濃囲いと比較して、より中央からの攻めに強くなるのが特徴。 - 対急戦策として
相手が早めに仕掛けてくる急戦型の場合に、短手数で守りを整える囲いとして活躍します。
囲いの起源や思想的背景についても知りたい方は、ミレニアム囲い(トーチカ囲い)の由来と組み方|日本将棋連盟コラムも参考になります。
トーチカ囲いの対策法、どう崩す?
トーチカ囲いは堅いものの、一度形を崩すと立て直しが難しい囲いでもあります。以下のような戦術が有効です。
- 斜めからの攻めを集中させる
- 駒交換を積極的に狙う
- 玉頭を攻める
一点集中で崩しにかかるのが、トーチカ囲い攻略のコツです。
他の囲いとの比較:美濃囲いや矢倉との違い
囲い名 | 特徴 | 強い場面 | 弱点 |
---|---|---|---|
トーチカ囲い | 金銀を縦に重ねた高耐久の守り | 受け将棋、中終盤の耐久戦 | 崩れると再構築が難しい |
美濃囲い | 横からの攻めに強くバランスが良い | 振り飛車、初心者の基本形 | 端攻めに弱い |
矢倉囲い | 居飛車向けで正面からの攻めに強い | 居飛車の持久戦 | 角の打ち込みに注意が必要 |
まとめ、トーチカ囲いは堅さで主導権を奪う構え
トーチカ囲いは、守備に特化した構造で相手の攻めを受けきり、反撃のチャンスをうかがう囲いです。組むのが比較的簡単で、短い手数で形が整うため、急戦対策や振り飛車党には特におすすめの囲いです。
ただし、受けきれなかったときのリスクも高いため、相手の攻め筋をよく読んでバランスを取ることが重要です。
筆者のひとこと、守りとは備えることではなく信じること
トーチカ囲いを見ていると、ただの守備ではない何かを感じます。
それは、未来の攻めに希望を託し、今はただ耐える、という意志の強さなのかもしれません。
人もまた、何かを成し遂げるとき、まずは守りを固め、心を整える必要があります。
備えるだけでなく、自分の構えを信じること――トーチカ囲いは、そんな覚悟の象徴のようも見えるのです。