ネット将棋がどんどんメジャーな将棋の形態になっている一方で、まだまだいわゆる道場での将棋人気も衰えていません。
とはいえ、将棋指しでまだリアルで指したことがない人がいるというのも事実。一度でもいいのでリアルの将棋を経験した方がいいと思うのですが、その前提として知っておきたい最低限のマナーがあります。マナーを知っておかないと相手に不快な思いをさせるだけではなく、非常識な人間だと思われることもあります。
今回は、将棋をリアルで(対面で)指す場合に絶対に覚えておきたいマナーについて紹介していきます。将棋大会や道場に行こうと考えている方は必見です。
対局が始まる前のマナー
1 挨拶
ネット将棋だと基本的に自分から進んで挨拶することはありませんが、実際の盤を挟んでの対局ではやはり挨拶は重要。盤面を挟んで「こんにちは」などと基本的な挨拶はかわしておきましょう。
なお、ネット将棋であっても、将棋倶楽部24などの場合は一言「よろしくお願いします」というのがマナーとなっています。「挨拶を送りますか?」と表示されるので、その場合はクリックして挨拶を送っておきましょう。
2 駒の並べ方
駒の並べ方には「伊藤流」と「大橋流」と呼ばれる伝統的な2つの並べ方があります。ほとんどの人はあまり気にせずに駒を並べていきますが、並べ方に少し気を配ってみるのもよいでしょう。駒の並べ方については、『【将棋入門】将棋の駒の初期配置と並べ方(伊藤流・大橋流)』で詳しく紹介しています。
3 王将と玉将
将棋には「王将」と「玉将」の二種類の駒があり、「王将」を上手(自分より強い人・同じ場合は年上)が、「玉将」を下手が用いるのが普通です。ですので、年齢的、または棋力的に自分が下手であると思った場合はすすんで玉将を手にしましょう。ただし、自分がどう見ても年齢的に上、棋力的にも上であったとしても、堂々と王将をとってしまうのは憚られますが。。。こちらもほとんどの人はあまり気にしないので、参考程度に知っておくくらいでよいでしょう。
4 振り駒
対局が始まる前に振り駒をします。通常は上手が駒を振るので、相手が自分より上手であれば「振り駒お願いします」などと言うのがよいでしょう。自分が明らかに上手であれば、「では振り駒をします」などと言えばOK。こちらもほとんどの人は気にしないので、自ら率先して振り駒をしても問題ないと思います。
5 対局時計
将棋の持ち時間付きの対局では通常対局時計を使います。対局時計にも様々な種類がありますが、広く使われているのはデジタル式の対局時計です。
使い方自体は難しくないのですが、覚えておきたいのが対局時計の位置。将棋は先手の方がわずかに有利なゲームだとされているため、そのギャップを埋め合わせる意味で、対局時計は後手に場所を決める権利が与えられます。基本的に時計は自分の利き手側にある方が押しやすいので、後手の利き手に置かれることになります。振り駒をして先後手が決まったら、後手に対局時計の位置を決める権利があることを覚えておきましょう。
なお、道場などの非公式な場所で将棋を指す場合は対局時計がないのが普通です。時間制限はありませんが、常識の範囲を超えた長考は禁物です。
対局中のマナー
1 待った
友人同士の対局などでは許されることもありますが、それ以外の場面での対局中の待ったは重大なマナー違反。「待った」とは、「駒から指し手が離れた」後に指し手を変えることです。大きなトラブルにも繋がりやすいので、絶対にやめましょう。
2 おしゃべり・助言
将棋の対局に関われるのは二人の対局者のみ。仮に別の対局を見ていてよい手が浮かんだとしても、それを対局者に助言することは許されませんし、別の誰かと対局中におしゃべりすることも許されません。
3 対局時計
対局中は、指した手で対局時計を押すのが決まりです。禁じ手ではないので、反対側の手で押したからと言って反則負けになるわけではありませんが、ある程度確立されているマナーです。
このマナーは「指した後に時計を押させる」ためにあります。反対側の手で押すのをOKにしてしまうと、指しながら押す人や指す前に押してしまう人が出てきてしまいます。
4 投了
挨拶と同じくらい基本的なことが「投了」です。自分の玉が詰まされたら、潔く「負けました」「参りました」と投了をします。その時に、軽く頭を下げてもよいでしょう。
投了のタイミングもしばしば議論の対象になります。あまりに早すぎる投了は将棋に対するやる気がないと見なされることがあり、しばしば批判されます。ただし、プロ棋士の中にも早投げの棋士がいることを考えると、そこまで深刻なマナー違反ではないと思います。
なお、伝統として、最後の詰みの形まで指すのではなく、数手前の詰みが決まった程度の段階で投了するのがよくある投了のタイミングです。その意味では、自玉の詰みが分かった時点で投了をしても全くマナー違反にはならず、むしろ主流です(もちろん最後の最後まで指してもOK)。
5 感想戦
対局終了後は感想戦をするのが普通です。感想戦とは、自分たちの指した将棋を盤面を戻して検討することです。ある意味では将棋の最も大切な部分で、対局中に気づかなかったポイントや、自分より強い人の考え方を学ぶことができます。
感想戦の始め方は人それぞれですが、大抵は適当な流れで始まり、適当な流れで終わります。明確な決まりがあるわけではありませんが、棋力の上達には確実につながるので、感想戦は絶対に経験しておきましょう。
もちろん、どうしても感想戦をする時間がない場合は、一言相手に伝えておけば問題ありません。ただし、対局が終わってすぐ会話を交わさずに立ち去ろうとするのは失礼な行為です。
盤上でのマナー
1 無意味な不成はしない
桂馬や銀の不成や、打ち歩詰め回避の不成は意味のある不成で、もちろんマナー違反ではありません。ただし、角交換での不成や、歩の不成は無意味な不成で、いわゆる「舐めプ」と捉えられてしまいます。
2 空打ちはしない
空打ちというのは、駒をとってその駒を机や駒箱の上でバンバンと打ち付ける行為です。音もしますし、見ていてあまり気持ちのいいものでもありません。
3 むやみに駒を触らない
駒を指す・打つ動作や、乱れた駒を整えるのを除いて、むやみに駒を触るのはマナー違反です。相手の駒を触るのはさらに失礼な行為とされています。
ネット将棋でのマナー
こちらはマナーというよりも絶対に破ってはいけないルールです。
1 自分の頭以外は使わない
当然ですが、自分の頭以外のリソースは使ってはいけません。将棋ソフトはもちろん、他人の助言、本なども含みます。盤に並べながら指すのもやめておいたほうが良いでしょう。
2 接続を切らない
将棋を指している途中にイライラしたとしても、接続を切ってはいけません。素直に投了ボタンを押しましょう。仮に接続を切ったとしても、負けの判定は残ります。
マナーを破ったらどうなる?
マナーと言っても、そのうちのいくつかは気にする人がほとんどいないレベルのものですし、挨拶の有無なども相手に不快感を与えることはあっても大会から追放されるレベルのものではありません。
しかし、特に対局中のマナー、特に待った・助言などは将棋の大会中に犯してしまうと深刻な問題になることも。自分が「負け」になってしまうことも覚悟すべきです。
また、ネット将棋ではあまり目に見えるマナーというものはありませんが、それでも紹介したようなルールを破ってしまうと、アカウント停止などの厳しい処分を受けることもあります。
まとめ
将棋がただのボードゲームではない所以は、こうした上手下手の関係や挨拶と投了などといった伝統的なマナーがあるからです。もちろん、すべての将棋指しはこれらを守って楽しく指すことが求められます。