将棋ソフトは人間の頭脳を超え、プロ棋士やアマチュア棋士もソフトを活用して研究する時代になりました。近年の将棋AIの発展はめまぐるしく、今度も成長していくことでしょう。将棋ソフトを活用する私たち人間が、将棋ソフトについて抑えておかなければいけない点がいくつかあります。まずは基本的なことについてみていきましょう。
将棋ソフトの仕組み
私たちのよくいう将棋ソフトといえば、こんなものをイメージすると思います。
これは確かに将棋ソフトなのですが、これは複数の機能によって成り立っています。はっきり言いますと、本来の将棋ソフトというのは人間でいう脳の役割です。ただ、脳だけでは行動をすることができません。そこで必要になるのがGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェイス)です。GUIとは人間でいう手足、つまり実際に動かすものということです。具体的に言うと盤駒のことです。また、評価値(ソフトの脳内)についても私たち人間に目に見える形で表してくれます。
ということで、将棋ソフトを使いたいということだったら基本的には、将棋ソフトのプログラム(実際に考える部分)に加えてGUIのダウンロードも必要となるということですね。
混同しやすいので、これ以降は脳の部分を「エンジン」、手足の部分を「GUI」、合わせて使える状態になったものを「将棋ソフト」ということにします。
将棋ソフトの種類
将棋ソフトには大きく分けて2種類あります。1つ目はフリーソフト、2つ目は市販ソフトです。それぞれにメリットデメリットがあるので見ていきましょう。
フリーソフト
フリーソフトとは、開発者がフリーで公開している将棋ソフトのプログラムです。フリーなので、インターネット上から完全無料でダウンロードできます。その一方で、それ以降の作業は自分でやらなければいけません。自分でやらなければいけない作業としては、アプリケーションのダウンロードやエンジンの設定などが含まれます。
現時点最強の「水匠5」や、かの有名な「Bonanza」などもフリーソフトです。特に水匠5などはフリーでありながら数あるソフトの中でもトップレべルの実力を持っています。
一番の大きなメリットとしては、やはり完全に無料な点です。有料のソフトは買うとかなりの値段がするものもありますから、ここで費用を抑えられるのは大きなポイントです。
もちろん、そんなフリーソフトにもデメリットがあります。大きく分けて2つ。1つ目はダウンロード作業が大変という点です。フリーの将棋ソフトを使うためには、GUIと呼ばれるインターフェイス部分を最初に導入し、そのうえで頭脳となるエンジンを取り込みます。パソコンに慣れている人にとっては簡単ですが、そうでない人にとってはかなり大変な作業になります。
例えば、Shogi GUIというGUIの導入方法については『Shogi GUI のダウンロード・インストール方法』で、そこに組み込むためのエンジン「水匠5」の導入方法については『水匠5のインストール方法とエンジン設定方法』で解説しています。
上の記事ではできる限り分かりやすく解説しているつもりですが、やはりどうしても余計な手間がかかってしまうのは事実。余計な手間をかけたくないのであれば、市販ソフトを導入したほうが簡単です。
2つ目にフリーのソフトに備わっているのは最低限の機能であるということです。特別な機能は備わっていません。もちろん、最低限であるからといって、実際に将棋ソフトを使う上で何か支障があるわけではありません。棋譜の解析や局面の解析などには全く支障がありません(プロ棋士が使っているくらいですから)。ですが、やはり「プロフェッショナル感」があるのも事実。なんとなく無機質で、近寄りがたいような雰囲気もあります。
市販ソフト
市販ソフトとは、企業が公開している将棋ソフトです。市販ということで、お金を出して購入するわけです。例えばこちらは、激指と呼ばれるマイナビの販売する将棋ソフトの操作スクリーンです。見た目を見ても、かなり派手になっているのが分かります。
メリットは大きく分けて2つ。1つ目は導入が簡単な点。元からいろいろと設定されているので、フリーソフトのように自分であれこれ設定する必要はありません。2つ目は多機能な点。有料で買っているわけですから相応のものが揃っていないと困ります。ただしそこは心配しなくても大丈夫。
通常対局:激指の強さを14級からPro+まで30段階で設定可能。また、時間設定や、平手・駒落ちなど局面を自由に設定して対局できます。
指導対局:香川、竹俣女流によるヒントやアドバイスを聞きながら対局します。女流と七番勝負…香川、竹俣女流と七番勝負で対決します。
検討モード:形勢判断、激指の読み筋を表示します。対局観戦や研究に最適です。レーティング戦…実力が数値化されるレーティングを懸けて激指と真剣勝負。対局の内容によって定跡力、終盤力などが診断されます。
詰将棋レーティング戦:激指が作成した詰将棋に挑戦。
詰棋バトル:週刊将棋掲載の3手・5手詰の詰将棋108問に挑戦。正解するとパネルが開いて女流棋士の画像が現れます。
次の一手バトル:週刊将棋「段・級位認定次の一手」から100問出題。正解率に応じてレーティングが変動します。
実戦詰将棋道場:激指同士の実戦で現れた詰みのある局面を1000問収録。
七段を倒せ!実戦編:棋力によってハンデがつけられた指定局面から激指七段と対局。マイナビ女子オープン棋譜鑑賞…第9期予選までの全対局を鑑賞可能。
上で紹介しているのは最もメジャーであろう市販の将棋ソフト「激指」の機能です。引用元の激指14は一世代前のシリーズで、現在は激指15が最新版として販売されているほか、定跡道場4というシリーズも販売されています。
棋譜解析や検討などといった基本的な機能以外にも、様々な役立つ機能が入っているのが分かると思います。女流棋士が登場したりもするので、より楽しみが生まれるのではないでしょうか。
結局何がおすすめなのか
今までの両者の特徴を整理してみた結論がこちらです。
対局など棋力向上メインで使いたい方:市販ソフト
定跡研究や棋譜並べメインで使い、それ以外の機能は基本的に要らないという人は、フリーソフトで十分です。主に研究目的でソフトを使う、有段者の方が当てはまると思います。
それに対してソフトとの対局や詰将棋・次の一手などで全般的な棋力向上を目指したいという方は市販ソフトがおすすめです。主に、初心者から級位者の方が当てはまると思います。
初心者であっても将棋ソフトを導入するべきか、というのはよくある悩みだと思います。個人的には「必ず導入すべし」とまでは言えないものの、「導入しておいて損はない」と考えています。詳しくは『初心者におすすめの将棋ソフト!そもそも必要なのか?』で紹介しています。
おすすめのフリーソフト
フリーソフトを入れる場合「水匠5」がおすすめです。水匠5は現時点での最強ソフトです。入れるなら頂点がいい!という方におすすめ。導入方法は先ほどのリンクから(再掲)。まずはShogi GUIをダウンロードし、その後でエンジンである水匠を導入します。
おすすめの市販ソフト
市販ソフトを買うなら、やはり「激指」がおすすめです。マイナビBOOKSが出しているおそらくもっとも有名な市販ソフトでしょう。私は長らく「激指14」を愛用してきましたが、2021年6月現在、「激指14」は販売終了しており、最新版の「激指15」が購入可能です。
激指の機能についても上記のリンクで説明されていますが、さらに詳しく知りたい方は『愛用している将棋ソフト「激指」の機能と特徴、ダウンロード方法』で紹介しています。
値段こそするものの、詰将棋や定跡講座(定跡道場の場合)など実際の買うとかなり高くつくようなコンテンツが多いのも事実。この多機能さからするに妥当な値段、というより、むしろコスパの良い価格かもしれません。