最強は言いすぎましたね(笑)。勝ちやすい戦法と解釈してください。将棋に「最強」と言い切れるほどの戦法は存在しないかもしれませんが、個々の戦法の勝率を調べあげれば、「勝ちやすい戦法」「勝ちにくい戦法」など大まかな傾向はつかめるはずです。
ノーマル振り飛車は勝ちづらい、だとかマイナー戦法は勝ちやすい、だとか言われてますが、実際のところはどうなのでしょうか。ということで、インターネット上に公開されている将棋ウォーズの勝率表を使って調べていきます。
今回は、こちらのサイトを使用。棋力を限定してしまうと偏りが出る可能性があるので、全棋力帯での結果を利用します。
ただここで注意。おそらくエフェクトが表示された際の勝ち負けなので、先後は考慮されていないと思われます。後手でしか表示されない戦法、先手でしか表示されない戦法あると思いますが、両方で表示される戦法は先手後手合わせた勝率になっています。データは2016年のものとなっていますが、アマチュアの間であれば勝率はあまり変わらないだろうということでおそらく問題なし。
ちなみに、先程少し触れた、勝率の高い戦法、低い戦法についてはプロ棋士の公式戦での戦法ごとになるともう少しはっきりしてきます。一例ですが、先手角交換四間の勝率約3割、後手ノーマル四間の勝率約4割、先手矢倉の勝率4割7分と戦法の移り変わりが良くわかります(平成29年度版将棋年鑑より)。特に角交換四間飛車の勝率は年々落ちていっているようで、原因が気になるこころです。まあ、プロ間で悪いといわれている戦法も、アマチュアでは全然通用しますが…。
最強戦法ベスト5(括弧内は勝率)
1位:遠山流(0.760)
1位から紹介していくというナンセンスな方法ですが、堂々の1位は「遠山流」。あまり名前の知られていない戦法が出てきましたが、ゴキゲン中飛車の将棋で金を7二(後手番)に上がる形を遠山流といいます。
遠山流の指し方については、折田四段のこちらの動画を参考にしてみてください。
将棋ウォーズ 3切れ実況(115) ゴキ中遠山流VS丸山ワクチン アゲラジあり
指された回数も下から3番目と、かなりのマイナー戦法ですが、中飛車党の方は必見かもしれません。
こちらは遠山流に関する、ほぼ唯一といってよい書籍です。急戦用と持久戦用の2通りがあります。興味のある人は必見。
2位:風車(0.736)
風車は、比較的有名な戦法です。右玉の派生といったイメージ。指しこなすのはかなり難しそうですが、右玉と同様、コアなファンを持った戦法といった感じでしょうか。イメージとしては、下図のような感じ。
飛車が5筋に回ると、このような左右対称風の綺麗な形になります。
(後手の駒組は適当です)
対局数はきmきm金よりは多く、立石流よりは少ない、くらいの感じでした。遠山流ほどマイナーではありません。
3位:塚田スぺシャル(0.706)
塚田スペシャルは、「名前だけは聞いたことがあるけど詳しいことは知らない」人が多い戦法の代表格だと思います。名前のインパクトが強いんでしょう。相掛かりで先手から積極的に仕掛けていく戦法のことなのですが、そもそも相掛かり自体不人気戦法である上に避けようと思えば簡単に避けられる戦法です。対局数も下から2番目と納得の順位。なお、相掛かりについては『絶対に覚えておきたい!相掛かり戦法の序盤定跡と指し方を徹底解説』で解説しており、塚田スペシャルについても少し触れています。
塚田スペシャルの新刊も出ています。興味がある方は試しに読んでみてもいいかも。
4位:5七金戦法(0.707)
こちらも知っている人が多い戦法です。4六金戦法などともいわれますが、将棋ウォーズでは5七金戦法となっています。角道を止めた中飛車に対する急戦策のひとつですね。
舟囲いから右金を5七に立ち、さらに4六まで繰り出して、中飛車の捌きを封じ込めて押さえ込むのが基本的な狙いになる。ツノ銀中飛車は角交換に強いので、4六に繰り出す駒が銀だと△4五歩の反発が厳しくなるが、金ならば▲4六金と引けるため△4五歩が甘くなる
そもそもノーマル中飛車自体見ることが滅多にないので、使う機会はほとんどないでしょう(対局数も下から9位)。作戦としてはかなり優秀だったようです。
5位:楠本式石田流(0.690)
そして5位に楠本式石田流。個人的に、かなり面白い戦法だと思っています。石田流の派生形のような形なのですが、B面攻撃(8二の飛車の攻撃)に重きを置いている戦法です。
手数がかなりかかるので、使用できる場面が限られてくるとは思いますが、これで勝てると相当気持ち良いと思います。使っている人も少ないですし、対策を知らない相手も多いと思います。
本当の最強戦法とは?
将棋ウォーズのデータを見てきて分かったようように、どうしても対局数の少ない戦法や初心者向けでない戦法の勝率が高くなりがちです。これでは本当の「最強戦法」が何かは分かりづらいところ。
では本当の最強戦法は何か?といったところですが、ここでは2つよく言及されるものを紹介します。
居飛車穴熊戦法
居飛車穴熊戦法(下図)は、やはり最強戦法の代名詞。
玉が非常に固く、多少無理な攻めでも成立してしまうことが多いのが厄介なところ。プロ・アマ問わず採用率は高く、通常のノーマル振り飛車破りの居飛車穴熊だけでなく、上からの攻めに強い銀冠穴熊や、中飛車対策の一直線穴熊など、バリエーションも豊富です。
居飛車穴熊の組み方については『居飛車穴熊囲いの基本の組み方の手順と指し回しのコツ』で、四間飛車に対する居飛車穴熊戦法の定跡については『居飛車穴熊戦法の基本定跡と指し方』で解説しています。
右四間飛車
居飛車穴熊と異なりプロ間での採用率が高いわけではありませんが、アマチュアの将棋(特に級位者間の将棋)で威力を発揮するのが右四間飛車戦法です(下図)。
矢倉破りの右四間飛車だけでなく、角換わりの右四間飛車、四間飛車破りの右四間飛車、石田流破りの右四間飛車など、こちらもバリエーションが非常に豊富で、右四間飛車さえ覚えておけばどの戦型にも対応できるのもメリット。詳しい定跡については『右四間飛車戦法の基本定跡と覚えておきたい攻め方を徹底解説』で解説しています。
勝ちにくいであろう戦法 (おまけ)
将棋ウォーズでの勝率が低いものをまとめてみると、こんな感じ。原始棒銀や鬼殺し、2三歩戦法など、納得のできる内容です。
2位:2三歩戦法(0.499)
3位:棒金(0.512)
4位:原始棒銀(0.522)5位:藤井システム/鬼殺し(0.523)
まとめ
勝率ははっきり戦法の強さや勝ちやすさを示す値ではありませんが、上位5位を見てみるといわゆる「マイナー戦法」と見られているものが全てを占めています。
マイナー戦法の強みとしては、自分は指し方を知ってるけど相手は対策に詳しくない、自分には慣れた戦法だけど相手は成れていない戦法、といった点ですね。
リアル対局で勝ちやすい戦法とネット対局で勝ちやすい戦法というのは変わってくるので一概には言えませんがアマチュア間では指す人の少ないマイナー戦法が勝ちやすい傾向にあるのではないかと思います。おすすめのマイナー戦法の指し方については『実は超有力!おすすめなB級マイナー戦法まとめ』で紹介しています。ぜひ併せてご覧ください。