将棋をはじめてみたものの、なかなか勝つことができない…。そんな方に共通するのは「玉を囲っていない」ということではないでしょうか。将棋で戦うにあたって、玉をしっかり囲うということは基本中の基本です。将棋にはたくさんの囲いがあり、すべてマスターする必要はありません。興味がある場合はこちらの記事を見てみてください。かなりの囲いを網羅していると思います。

正直言って、囲いのすべてが優秀で使いやすいわけではありません。今回は、まず「囲い」が何かを紹介しつつ、戦型別におすすめの囲いを紹介していきます。
そもそも囲いとは
将棋の囲いは、一言でいえば「王様の城」。玉を相手から簡単に取られないようにするために、味方の金銀で玉を固めます。将棋の初期配置では、自分の玉は5九にいるはずです。
ですが、このままでは戦いが始まったときに危険。玉を守っている駒が金しかいませんし、仮に下図のように5七の地点に何か成駒を作られると、それだけでも大きなプレッシャーです。
これでは激しい戦いなんてできるわけがない、ということで将棋で玉を囲うことは必須事項です。
囲いの例
下図は矢倉囲いという囲いの一例です。左側に玉を置き、その横に銀1枚、金2枚を並べます。上からの攻めにも横からの攻めにも強い形です。
囲いと戦法はセット
玉の囲いの位置は、飛車の位置に左右されます。飛車は将棋の攻めの要の駒。飛車のいる位置の回りで戦いが起こります。玉の囲いがより効果的であるためには、できる限り囲いが戦場から離れてなければならないので、玉の囲いは飛車の位置とは逆の場所につくられます。
居飛車と振り飛車
将棋の戦法は飛車の位置によって、居飛車と振り飛車の二つに分けることができます。居飛車は飛車を初期位置の2筋に置いて戦う指し方(下図左)で、振り飛車は飛車を他の筋に振って戦う指し方(下図右)
将棋ではほとんどのケースで、飛車のまわりで戦いが起こります。玉を効果的に守るためには、玉を飛車からなるべく遠ざけておく必要があり、必然的に居飛車用の囲いは盤面左側、振り飛車用の囲いは盤面右側にできるようになります。
相居飛車・対抗型・相振り飛車
将棋の戦法に居飛車と振り飛車があるということは、戦いの形は全部で3パターン。居飛車対居飛車の「相居飛車」、居飛車対振り飛車の「対抗型」、振り飛車対振り飛車の「相振り飛車」の4つに絞られます。
相居飛車では、`下図のようにお互いの玉の上部から攻めあうような展開になりがちなので、上からの攻めに強い囲いがよく用いられます。

相振り飛車でも、飛車の位置は違えど、相居飛車と同様にお互いの玉の上部から攻めあいます。こちらも上からの攻めに強い囲いが好まれます。
対抗型ではお互いの飛車の位置が違うので、横から攻めていく展開になることが多いです。ですので、対抗型では横からの攻めに強い囲いが好まれます。
ただし、これらはあくまで原則であり、当てはまらないケースはたくさんあります。そもそもほとんどの囲いは縦と横の攻めの両方に対応していますし、相居飛車や相振り飛車であっても横から攻める展開になることも多いです(対抗型の場合も同様)。考え方の一つとして覚えておいてください。
居飛車の囲いと振り飛車の囲いは異なる
ここで少しまとめると、将棋には居飛車と振り飛車という二種類の戦法があり、飛車の位置で分けられています。玉の囲いの位置は飛車の位置に左右されるので、将棋の囲いにも二種類あり、居飛車用の囲いと振り飛車の用の囲いの2つです。
- 居飛車の囲いと振り飛車の囲いは異なる
- 自分が居飛車を指したいのか(指しているのか)、振り飛車を指したいのか(指しているのか)、によって覚えるべき囲いは異なる
居飛車・振り飛車などについてよく分からないという方は、こちらの記事をご覧ください。


戦型別のおすすめの囲い
居飛車の囲い
矢倉囲い(相居飛車)
居飛車の最も基本的な囲いは、下図のような矢倉囲いです。上からの攻めに特に強いので、自分も相手も居飛車で戦う相居飛車戦でよく用いられます。

中住まい(相居飛車)
中住まいも、相居飛車の、特に激しい戦いが起こる時に使われる囲いです。矢倉ほど固くはありませんが手数がかからず、玉の逃げ道が多いのが特徴。

舟囲い(対抗型)
相手が振り飛車の場合(対振り飛車)の場合によく使われるのが舟囲いで、舟囲いもおすすめの居飛車の囲いの一つです。舟囲いは上からの攻めには弱い分、横からの攻めには比較的強いのが特徴。

左美濃(対抗型)
舟囲いだと囲いがもろくて心もとない場合は、振り飛車に対して左美濃を使うこともできます。左美濃は舟囲いよりも手数はかかるものの非常に固く、より安定感があります。

振り飛車の囲い
美濃囲い(主に対抗型・相振り飛車にも使用可能)
美濃囲いは振り飛車の最も基本の囲いです。横からの攻めに非常に強く、手数もあまりかかりません。対居飛車にも相振り飛車にも応用でき、振り飛車を指すのであれば美濃囲いさえ覚えておけば究極的には問題ありません。

金無双(相振り飛車)
金無双は美濃囲いと比較して上からの攻めに強く、その特徴から相振り飛車(自分も相手も振り飛車)の戦いでよく用いられます。

相手の戦法に合わせて囲いを選ぶ
ここまで見てきた囲いをまとめてみると、以下のようになります。相手の戦法に合わせて適切な囲いを選びましょう。
相手が居飛車 | 相手が振り飛車 | |
自分が居飛車 | 矢倉(落ち着いた戦い)・中住まい(激しい戦い) | 舟囲い(急戦)・左美濃(持久戦) |
自分が振り飛車 | 美濃囲い | 美濃囲い・金無双 |
最後に
囲いを覚えるうえで大切なのは、当たり前ですが名前を覚えることではありません。大切なのは、組み方はもちろん、その囲いを最大限に生かした戦い方を学ぶことです。
戦法を覚える過程で囲いは自然に身につくことが多いので、わざわざ戦法を覚えるのと同様に囲いを個別に学ぶ必要はないと思います。ですが、囲いも戦法と同様に奥の深い世界。囲いの「活用法」を学びたい場合は、次のような棋書がおすすめです。
その他のおすすめ関連書籍
囲いの組み方だけでなく、うまい戦い方も身に着けることで、勝率アップが期待できると思います。