将棋の戦いは大きく3つにわけることができます。「序盤」「中盤」「終盤」です。「相手玉をより早く捕まえる」という大きな目的一つに対してでも、「序盤」「中盤」「終盤」それぞれ目指す方針や重視する項目も違ってきます。具体的な例を挙げると、まだ戦いも始まっていない段階で相手玉を詰まそうと思っても無駄ですよね。
今回は「序盤」「中盤」「終盤」がどのように分けられているのか、どのような方針で指せば良いのか、ということについてをまずは解説します。さらに、序盤の力をつけるためにはどのようなことをすればよいのか、終盤の力をつけるためにはどのようなことをすればいいのかなど、具体的な勉強法についても紹介していきたいと思います。
序盤
序盤とは、初手から仕掛けまでのことを言います。仕掛けというのは駒をぶつけて本格的な戦いを起こすことで、大きな戦いの始まるきっかけとなるものです。序盤においては主に攻撃陣の整備と玉の囲いの整備と守備陣の整備を最優先で行います。要するに、自陣の整備をするということです。そして、少しでも相手に隙を見せてはいけません。隙を見せる(=角打ちの隙を見せる など)と、序盤だろうが何だろうが一気に攻められてしまいます。
序盤は、覚えることがたくさんあります。ということで、『序盤の指し方と考え方・戦法別の基本定跡や囲い方を徹底解説』でも、さらに詳しく序盤の具体的な指し方について紹介しています。
攻撃陣の整備
攻撃陣の整備とは、攻めの要である銀や飛車角(+桂)を使いやすい状態にすること。
例えば飛車先の歩を突いていったり、銀を前に繰り出していく準備をしたりなどです。
上図なら、飛車先を突き、銀を3七に構え2筋を攻めていく準備をしています。
守備陣の整備
守備陣の整備は、相手からすぐに攻めつぶされないように守りの構えを作ることです。
攻撃陣の整備と玉の囲いの整備ばかりして、相手が今まさに攻めてこようとしているところの守りが薄ければ一気に潰されてしまいます。
具体的に言うと、狙われやすい角頭の隣に金を置いて角頭を守ったりすることです。
金が角の隣にいることで、歩を打って飛車を追い返すことができています。
囲いの整備
囲いは、玉を金銀で固め、これからの戦いに備えるものです。囲いを作ることで、玉の安全度は格段にアップします。
初心者の方で、よく何も囲わずに攻めかかってくる人がいます。ですが、それでは激しい戦いになったときに反撃が厳しくなりがち。原則として、玉はしっかりと囲うようにしましょう。
序盤の強化法
序盤は攻撃陣の整備・玉の囲いの整備・守備陣の整備を最優先で行います。ということで、重要になってくるのは戦法と囲いの勉強です。
戦法とは、大雑把に言えば将棋の攻め方のこと。飛車+銀で敵陣突破を狙っていく戦法もあれば、飛車を振ってカウンターを狙う戦法もあり、たくさんの戦法が考えられています。まだ自分の指す戦法を決めていない人は、まず自分の得意戦法を一つ持ちましょう。初心者におすすめの戦法については、こちらの記事で詳しく紹介しています。
また、先ほども触れたように戦法とセットで覚えなければいけないのが「囲い」です。囲いにも様々な種類がありますが、もちろんすべてを覚える必要はなく、自分の指す戦法にあった囲いを選択するのがポイント。戦型別の囲いについては、こちらの記事で詳しく紹介しています。
中盤とは
中盤とは仕掛けから本格的な戦いが行われる場面です。お互いの駒が激しくぶつかる中盤戦の中で、駒得や敵陣突破など、具体的な戦果を上げることを狙っていきます。
序盤の段階でしっかりと陣形を整備せずに中盤戦に入ってしまうと、隙が多くなり相手に駒を打ち込まれやすくなります。結果的に駒損などにつながります。また、攻めの手筋が頻繁に出てくるの中盤戦の特徴です。中盤の指し方と鍛え方については、『中盤の指し方と考え方・戦法別の攻め方と仕掛け方を徹底解説』で詳しく解説しています。
中盤の強化法
中盤力をつけるためには「手筋」を身に着けていくのが一番です。手筋を駆使して相手の陣形の隙をつくことができれば、一気に優位に立てます。覚えておくと便利な必修手筋については、『攻め方を覚えるための「攻め」の必修手筋20』と『「受け」「守り」の必修手筋9選』で紹介しています。
もっと手筋について学びたいという方は、実際に手筋に関する本を買って読んでみるのがおすすめです。初心者向けの手筋本としては、こちらがおすすめです。
次の一手形式なので、反復演習しやすいですし、レベル感もちょうどよいかと思います。その他の手筋の本に興味のある方は、こちらの記事で詳しく紹介しています。
中盤力を鍛えるのは手筋だけではありません。大切なのは実戦を戦ったり、プロ棋士の実際の戦いを見てみることです。おすすめなのは、NHK杯やAbemaTVの将棋放送などのプロ棋士の棋譜解説を見てみること。プロの指し手やプロの解説を聞き、中盤はどのようなことを狙って指していくのかだんだん身についていくと思います。ただの棋譜集を並べるのは、解説もなく正直きついはず。プロ棋士の解説付きならわかりやすく中盤の考え方を理解できます。
終盤とは
終盤は、将棋のクライマックス。いざ王様を詰ましにかかる局面です。どこからが終盤のはじまりなのかは難しいのですが、激しい戦いが一段落したころから相手玉に目を向けてみると良いでしょう。
終盤を指すにあたって重要なのが「詰み」と「寄せ」です。ただし、最初から相手玉を詰まそうと思ってはいけません。王手をたくさんしたところで、玉に逃げられてしまったら意味がありません。適当に駒を打って詰まそうとするのではなく、まず最初に相手玉を詰ましやすい局面にしていきます。この作業を「寄せ」と言います。寄せにもいろいろあるのですが、ここではわかりやすい「囲い崩し」を紹介します。
上図は居飛車対振り飛車の戦い。先手は銀冠、後手は片美濃に囲っています。今は居飛車側の手番なのですが、必殺の一手があります。その一手は▲6二金。△同金には▲7一角から一気に囲いが崩れますし、後手は他に受けようがありません。終盤では、こんな感じでまずは「囲い崩し」を狙っていくことが基本です。終盤の具体的な指し回しのコツについては、『終盤の指し方と考え方・寄せ方と詰まし方のコツを徹底解説』で詳しく紹介しています。
終盤の強化法
終盤は「詰み」と「寄せ」と言いましたが、終盤強化でもやはりこれらが重要になってきます。詰みの力をつけるためには、たくさんの詰将棋を解いていきましょう。詰将棋を解くことで得られる効果は山ほどあります。
①盤面に慣れる
②手を読めるようになる
③詰みの形が覚えられる
もちろんまだまだありますが、重要なのは以上の3つ。特に①②は終盤のみならず将棋上達そのものに関わってくる分野。詰将棋は将棋上達に欠かせない要素です。
おすすめの詰将棋本についてはこちらで紹介しています。まずは簡単なものからどんどん解いていってみましょう。
次に寄せの力をつける方法ですが、必至問題(絶対に受からない詰めろをかける)を解いていくのは、かなりハードです。ということで、初心者には囲い崩しを勉強するのがおすすめです。他の分野に比べてとっつきやすいです。
囲い崩しの手筋を知っておけば、自分が攻めるときだけではなく自分が攻められるときにも応用が利きます。囲い崩しを勉強できるおすすめの本はこちらの佐藤康光九段の著書です。
NHKの講座を本にしたものですね。そのほかの終盤の本についてはこちらで紹介していますので、もしも興味があれば見ていってください。