王手とは、「次に相手が何もしなければ相手の玉を取れるような手」のこと。例えば下図では、次に相手が何もしなければ、5八にいる飛車が5一に移動して、玉を取ることができます。
▲5八飛のように、自分の駒の利きに相手の玉が入るような手(次に玉が取れるような手)を指すことを、「王手をかける」と呼びます。同時に、▲5八飛という一手は「王手」です。
王手をかけられたら
将棋は玉を取られては負けなので、相手から王手をかけられた場合、何とかしてその王手を回避する必要があります。なお、王手に気づかずに、王手を放置していた場合(王手放置)、反則負けとなります。
玉を逃がす
王手を回避するための最も基本的な手段は、玉をどこか別の、相手の駒の利きの通らない場所に移動させることです。先ほどの図であれば、王を5筋から動かすことで王手回避することができます(下図)。
合駒(あいごま)をする
王手している駒が飛車や角など、一定方向にいくらでも進めるような駒の場合、合駒をすることもできます。合駒とは、その駒をさえぎる位置に自分の駒を配置すること。例えば持ち駒に歩がある場合は、5八の飛車に王手をかけられている下図左から、5二歩と歩をうち(下図右)、飛車の利きを遮断できます。
なお、盤上の駒を動かすことで、駒の利きを遮断することもできます。王手をかけられた局面でもし仮に隣に金がいれば(下図左)、金を5筋に動かす(下図右)ことで、こちらも王手を回避できます。
王手している駒を取る
王手されている局面で、王手している駒を取ることができれば、それがもっとも簡単でシンプルな王手回避策となります。例えば下図のように5八に飛車を置いて王手をした局面で、実際には2四に相手の角がいる、ということも考えられます(下図左)。このような場合、後手としては単に5八角と飛車を取ることで(下図右)、王手を回避できます。
特殊な王手
空き王手
自分の駒を動かすことで間接的に王手をかけることを空き王手といいます。例えば下図左では、5八の飛車の利きを自駒の角がさえぎっていますが、例えば角を1一に成ることで(下図右)、飛車の利きを通し、王手をかけることができます。
両王手
両王手とは、二つの駒で同時に王手をかけることを指します。先ほどと同じく下図左では、5八の飛車の利きを自駒の角がさえぎっています。ここで角を3三に成ると(下図右)、角と飛車の両方の駒が王手をかけている状態(両王手)となります。
両王手がかかっている場合、相手としては両方の駒の利きから玉を守る必要があるので、相手の動きに制約をかけることができます。
王手のテクニック
王手〇取り
将棋を指すうえで、王手は絶対に回避しなければいけません。だからこそ、王手ともう一つの別の狙いのある手を指すことで、相手に別の何かを犠牲にさせることができます。もっとも有名なのは、王手を含む両取りの手順。下図の2四角は、王手でありながら、次に3五の飛車を取ることができます。
王手を防ぐ相手に対して、こちらは飛車をタダ取りできます。
王手は追う手
実際の将棋の戦いでは、王手をかければいいというものではありません。王手はその一瞬だけは強力なものの、玉を逃がしたり、合駒をするだけですぐにかわされてしまうことも多いです。例えば下図のように、将棋の最序盤の段階で1五角と王手しても(下図左)、5二玉とかわされてしまえば、それ以上の攻めはありません。むしろ、1五の角を狙われる展開になってしまいます。
将棋の戦いではやみくもに王手を続けるのではなく、相手玉を包むように追い込んでいくのがより有効です。
「王手」って言わなきゃだめ?
王手をする際には「王手」と必ず言わなければいけない、などという慣習は存在しません。王手と発声しなくても何の問題にもなりません。