将棋をはじめてみたものの、なかなか勝つことができない…。そんな方に共通するのは「玉を囲っていない」ということではないでしょうか。将棋で戦うにあたって、玉をしっかり囲うということは基本中の基本です。将棋にはたくさんの囲いがあり、すべてマスターする必要はありません。興味がある場合はこちらの記事を見てみてください。かなりの囲いを網羅していると思います。
しかし、正直言って、囲いのすべてが優秀で使いやすいわけではありません。今回は、初心者向けに、戦型別(居飛車・振り飛車別)におすすめの囲いを紹介していきます。
初心者向けのおすすめ囲い5選
ここからは初心者向けの囲いについて5つ、戦型別に紹介していきます。
居飛車を指す場合も振り飛車を指す場合も、大きく分けて二つのパターンがあります。自分が居飛車で相手が振り飛車、または自分が振り飛車で相手が居飛車の対抗型、そして自分も相手も居飛車または振り飛車の相居飛車/相振り飛車です。
さらに、囲いは自分の飛車の位置とは反対側につくるので、居飛車の場合は玉を左に、振り飛車であれば玉を右に囲います。また相居飛車・相振り飛車では縦の攻めが多いので縦の攻めに強い囲い、対抗型では横の攻めが多いので横攻めに強い囲いを選びます。表にすると、こんな感じ。
相手が居飛車 | 相手が振り飛車 | |
自分が居飛車 | 位置は左側・縦に強い | 位置は左側・横に強い |
自分が振り飛車 | 位置は右側・横に強い | 位置は右側・縦に強い |
将棋の囲いを選ぶ際には、上表の原則をもとに選んでいきます。この原則については、『将棋の戦法と囲いの「相性」とは?囲いの選び方を徹底解説』でも紹介しています。
今回は、居飛車党向けに3つ(うち相居飛車1つ、対抗型2つ)、そして振り飛車党向けに2つ(うち対抗型・相振り飛車共に使えるもの1つ、相振り飛車用1つ)の囲いを紹介していきます。もちろんこれから様々な囲いを覚える機会は増えていくと思いますが、最初の段階ではこれらの3つまたは2つの囲いさえマスターしておけば基本的には問題ありません。
居飛車の囲い
矢倉囲い(相居飛車)
居飛車の最も基本的な囲いは、下図のような矢倉囲いです。上からの攻めに特に強いので、自分も相手も居飛車で戦う相居飛車戦でよく用いられます。
矢倉囲いにもいくつかバリエーションがあり、一つの形を使い続けるのではなく、細かい陣形の違い(例えば角交換をしているかしていないか、など)に応じて矢倉の形を使い分けていくのがおすすめ。矢倉囲いの組み方や指し方のコツについては『矢倉囲いの基本の組み方と指しまわしのコツ』で解説しています。
舟囲い(対抗型)
相手が振り飛車の場合(対振り飛車)の場合によく使われるのが舟囲いで、舟囲いもおすすめの居飛車の囲いの一つです。舟囲いは上からの攻めには弱い分、横からの攻めには比較的強いのが特徴。手数もかからず簡単に組むことができます。
舟囲いがおすすめの1つの理由は、多くの振り飛車破りの戦法の基本の囲いとなっているからです。例えば、『』で紹介している4六銀左急戦という四間飛車対策の戦法でも、舟囲いを使っています。
もう1つのおすすめの理由は、対振り飛車の囲いを組む際には、結局はこの舟囲いの形を経由することが多いからです。将来舟囲いを指すのを辞めて、穴熊など他の囲いを使うようになったとしても、舟囲いの組み方は覚えておく必要があります。舟囲いの組み方や指し方のコツについては『舟囲いの基本の組み方と指しまわしのコツ』で解説しています。
左美濃(対抗型)
舟囲いだと囲いが弱くて心もとない場合は、振り飛車に対して左美濃を使うこともできます。左美濃は舟囲いよりも手数はかかるものの非常に固く、より安定感があります。
ただし、先ほども触れたように左美濃は舟囲いの形を作ってからさらに組み上げていくので、舟囲いの組み方はどちらにせよ知っておく必要があります。左美濃の組み方や指し方のコツについては『左美濃の基本の組み方と指しまわしのコツ』で解説しています。
振り飛車の囲い
美濃囲い(対抗型・相振り飛車)
美濃囲いは振り飛車の最も基本の囲いです。横からの攻めに非常に強く、手数もあまりかかりません。対居飛車にも相振り飛車にも応用でき、振り飛車を指すのであれば美濃囲いさえ覚えておけば究極的には問題ありません。
美濃囲いの組み方や指し方のコツについては『美濃囲いの基本の組み方・発展の手順と指しまわしのコツ』で解説しています。
金無双(相振り飛車)
金無双は美濃囲いと比較して上からの攻めに強く、その特徴から相振り飛車(自分も相手も振り飛車)の戦いでよく用いられます。
金無双の組み方や指し方のコツについては『金無双の基本の組み方と指しまわしのコツ』で解説しています。
初心者におすすめできない囲い
今回は5つ初心者におすすめの囲いを紹介してきました。しかし、中には初心者にはあまりおすすめできない囲いがひとつあります(プロ・アマで人気なのにもかかわらず、です)。
穴熊(居飛車穴熊・振り飛車穴熊)
穴熊は、初心者には絶対におすすめできない囲いです。知っている方も多いと思いますが、穴熊は玉を香車の位置(9九や1九)に移動させ、周りを金銀で固める指し方のこと。
居飛車をもって穴熊を指す場合は下図のようになります(居飛車穴熊)。金銀三枚がくっついていて、いかにも固そうな形です。
振り飛車をもって穴熊を指す場合は下図のようになります(振り飛車穴熊)。こちらも同様に攻略困難に見えます。
この固さがプロ・アマ問わず人気で、現在多くの戦法に組み合わされている囲いなのですが、初心者のうちは手を出さないのが無難。理由は以下の通り。
②薄い玉で戦う練習ができない
③終盤の練習ができない
初心者におすすめの囲いまとめ
ここまで見てきた囲いをまとめてみると、以下のようになります。相手の戦法に合わせて適切な囲いを選びましょう。
相手が居飛車 | 相手が振り飛車 | |
自分が居飛車 | 矢倉 | 舟囲い(速さ重視)・左美濃(固さ重視) |
自分が振り飛車 | 美濃囲い | 美濃囲い・金無双 |
なお、これら以外にも人気の囲いやおすすめの囲いはたくさんあります。居飛車であれば、「中住まい」「中原囲い」なども覚えておいてよいですし(相居飛車)、振り飛車であれば「右矢倉」も相振り飛車では人気の囲いです。
今回紹介しなかった囲いについては、『将棋の主要な囲い一覧(居飛車・振り飛車別)』で確認できます。
最後に
囲いを覚えるうえで大切なのは、当たり前ですが名前を覚えることではありません。大切なのは、組み方はもちろん、その囲いを最大限に生かした戦い方を学ぶことです。
戦法を覚える過程で囲いは自然に身につくことが多いので、わざわざ戦法を覚えるのと同様に囲いを個別に学ぶ必要はないと思います。ですが、囲いも戦法と同様に奥の深い世界。囲いの「活用法」を学びたい場合は、次のような棋書がおすすめです。
おすすめ関連書籍
囲いの組み方だけでなく、うまい戦い方も身に着けることで、勝率アップが期待できると思います。