藤井聡太竜王は居飛車党として知られていますが、実際にどんな戦法を好んで指しているのか、どんな戦法の勝率が高いのかはあまり触れられることがありません。今回は藤井竜王のプロ入りした2016年末から2022年3月までの棋譜のデータから竜王の戦型を分析してみました。データは棋士成績DBのものを利用しています。
はじめに
戦型は以下の6つに分類されています(藤井竜王は振り飛車を採用しません)。うち、上5つ(相掛かり・横歩取り・角換わり・矢倉・力戦)は相居飛車の戦いです。対振り飛車については数もあまり多くないので、全てまとめて対振り飛車としています。
相掛かり |
横歩取り |
角換わり |
矢倉 |
力戦 |
対振り飛車 |
先手番での戦型
戦型 | 対局数 |
---|---|
角換わり(一手損角換わり含む) | 44 |
相掛かり | 22 |
矢倉 | 21 |
横歩取り | 20 |
力戦 | 9 |
対振り飛車 | 34 |
藤井竜王の先手番を見てみましょう。表とグラフから分かるように、対振り飛車(割合がほぼ一定)と力戦を除けば、相居飛車の度の戦型も割合バランスよく指していることが分かります。先手番では角換わりが多めで、相掛かり・横歩取り・矢倉が並んでいます。
後手番での戦型
戦型 | 対局数 |
---|---|
角換わり(一手損角換わり含む) | 47 |
相掛かり | 37 |
矢倉 | 41 |
横歩取り | 0 |
力戦 | 1 |
対振り飛車 | 40 |
後手番で相手が何をしてこようと△8四歩と指すのが藤井流です。▲2六歩△8四歩の序盤は相掛かりになりやすく、▲7六歩△8四歩の序盤は角換わりや矢倉になりやすいことがわかります。特徴的なのが、藤井竜王は後手番で横歩取りを一切選択していない点です。先手が角道を開けていれば角換わりの展開も横歩取りの展開も両方考えられるところではありますが、その場合藤井竜王は角換わりを選択しています。
先手番の戦型別勝率
戦型 | 勝利数 | 敗北数 | 勝率 |
---|---|---|---|
角換わり | 33 | 5 | 0.868 |
相掛かり | 20 | 2 | 0.909 |
矢倉 | 20 | 1 | 0.952 |
横歩取り | 13 | 7 | 0.650 |
力戦 | 8 | 1 | 0.889 |
将棋界では一般的ですが、先手番の勝率は非常に高めです。特に相掛かりと矢倉の勝率は驚きの9割を超えており、得意戦法であるといえそうです。その一方で、横歩取りの勝率は6割台とやや低め。藤井竜王の平均勝率が8割を超えているということを考えると、先手番での横歩取りを苦手にしている可能性はありそうです。
後手番の戦型別勝率
戦型 | 勝利数 | 敗北数 | 勝率 |
---|---|---|---|
角換わり | 36 | 11 | 0.766 |
相掛かり | 27 | 10 | 0.730 |
矢倉 | 36 | 5 | 0.878 |
横歩取り | 0 | 0 | 0.000 |
力戦 | 0 | 1 | 0.000 |
後手番の勝率は当然ながら先手番に比べてやや低め。それでも、どの戦型でも(力戦除く)7割から8割台を維持しています。特に矢倉は8割7分と、特に得意としていることが分かります。その一方で、相掛かりの先手番は勝率が9割を超えていたのにもかかわらず、相掛かりの後手番の勝率は7割3分と他と比べると少し低め。
結論:藤井聡太竜王の戦型分析
藤井聡太竜王の戦型分析をまとめてみると、こんな感じ。「苦手」といっても、実際には勝率は6割以上あるので、一部の得意戦法の勝率が抜群に高いことが分かります。
得意戦法:先手相掛かり・矢倉
苦手戦法:後手相掛かり・横歩取り