ゴキゲン中飛車に対する5八金右超急戦(以下、単に超急戦)は、ゴキゲン中飛車に対する変化の中でも最も激しい部類の一つです。研究も発展途上な部分が多くあり、多くの変化は難解です。
超急戦 基本図までの指し手
初手からの指し手 ▲7六歩△3四歩▲2六歩△5四歩▲2五歩△5二飛▲5八金右(下図)
ゴキゲン中飛車の一般的な出だしから、▲5八金右と上がるのが超急戦の序盤です。なお、▲5八金右に代えて▲4八銀などと上がると、一番人気の超速戦法に合流します。超速戦法については『超速3七銀戦法の基本定跡と指し方まとめ』で詳しく定跡を解説しています。
上図以下 △5五歩(超急戦基本図)
居飛車の▲5八金右は超急戦を意図した一手。それに対して振り飛車は受け入れる(超急戦の展開にする)ことも、受け入れない(超急戦の展開を選ばない)こともできます。振り飛車がここで△5五歩とすれば、超急戦の変化となります。
超急戦 基本図からの指し手
超急戦基本図以下 ▲2四歩△同歩▲同飛△5六歩▲同歩△8八角成▲同銀△3三角(下図)
△5五歩に対して居飛車は飛車先を交換しますが、後手も△5六歩と突いて角交換を挑み、△3三角と反撃。飛車と銀の両取りとなっています。
上図以下 ▲2一飛成△8八角成▲5五桂(下図)
△3三角に対しては▲2一飛成と攻め込むのが当然の一手ですが、後手も当然△8八角成と攻めあいます。桂馬と銀の交換で居飛車が悪いようですが、▲5五桂という味の良い一手の存在がポイントです。
▲5五桂は飛車と馬の利きを止めているだけでなく、次に後手が適当な対策を取らなければ▲3三角と打ってから後手の馬を素抜く手を狙っています。後手としては、6二玉が唯一の可能な手段。
上図以下 △6二玉▲1一龍(分岐図)
△6二玉に対しては▲1一龍と取るのが一般的。もちろん▲7五角と打つ手や▲4三桂成とする手も考えられるところですが、今回は割愛します。▲1一龍の局面は、後手の手が分かれる局面。今回は最も一般的な△9九馬の変化、また同様に有力な△8九馬の変化を見ていきます。
▲1一龍に△9九馬
△9九馬は、龍に利かせた斜めの利きを保ちつつ、香車を回収する自然な一手。△9九馬には▲3三角などとするのが一般的でしたが、おすすめなのは▲3三香とする所謂「都成新手」です。
分岐図以下 ▲3三香(下図)
▲3三香と、3一の銀に狙いを当てて香車を打ちます。もちろん後手が何もしなければ▲3一香成ですし、かといって銀を逃げるわけにもいきません(金が取られてしまう)。唯一の正答は△2二銀打(下図)。
△2二銀打は竜取りですが、気にせず▲3一香成と突っ込むのがこれも正しい手順。△1一銀には金を取っておいて二枚替えで先手よし。よって△同金▲1二飛△1一香(下図)と進みます。
△1一香と龍を狙ってくる手に対して、龍を切って銀を取るのではなく、香車を取るのがポイント。取った香車は6六に打って玉頭を狙います。
上図以下 ▲同龍△同銀▲6六香(下図)
後手としては6三の地点を受けなければならないわけですが、先手からは▲4三桂成やその後の▲4四角など、強力な狙いがあります。△7二銀などの受けは無力なので、後手は△6六同角▲同歩と馬を切って下図。
上図ではまだ先手の狙いである▲4三桂成・▲4四角が残っているので、後手は△4二金と受けますが、▲6五歩と突いてどうか(下図)。
以下△5四歩▲6四歩△5五歩▲6三歩成△同玉▲6四歩(下図)といった展開が考えられます。
非常に難解な中盤・終盤戦となります。将棋ソフトによる研究のし甲斐があるでしょう。
▲1一龍に△8九馬
分岐図以下 △8九馬(下図)
△9九馬に代えて、△8九馬と桂馬を取る手も考えられます。これに対しては、馬筋がなくなったのを利用して▲4三桂成とすることができます。
上図以下 ▲4三桂成(下図)
▲4三桂成は飛車取り。かといって飛車は横に逃げることができないので、△5六飛が当然の一手となります。
上図以下 △5六飛▲5七香△同飛成▲同金(下図)
▲5七香は後手も予測しているところですが、逃げていても先手の攻めがさらに強化されるだけなので、△同飛成と飛車を切り込みます。△同飛成を▲同金と取って上図。上図は先手が一気に後手玉を仕留められる局面で、例えば△5六歩や△6五桂などの後手の自然な一手には、▲3一龍△同金▲5三角(下図)が成立します。
以下 △7二玉に▲5二銀(下図)が、▲6一銀不成以下の詰めろ。
ここからは先手が気持ちよく詰めろの連続で迫れるので、先手が一歩速度で勝っている状態。なので、後手は▲3一龍△同金▲5三角の筋を防ぐ手段が必要になります。
△5六歩に代えて △7二玉(下図)
△7二玉と早逃げするのが可能な一手。ただし、△7二玉に対しても、▲3一龍から強襲する手順があります。
上図以下 ▲3一龍△同金▲5二銀△6二金▲5一飛(下図)
上図は一例。まだまだ形勢は難しいところではありますが、実戦的には居飛車側が勝ちやすいという印象です。
最後に
超急戦は、まだまだ未解明の分野が多く、結論は出ていません。さらなる研究が期待されます。超急戦を指すうえで注意しておきたいのは、超急戦になるかならないかの最終的な決定権は振り飛車側にあるということです。つまり、居飛車としては超急戦だけを勉強するというわけにはいかず、それ以外のゴキゲン中飛車対策についても学んでおく必要があります。ゴキゲン中飛車の対策については、『ゴキゲン中飛車対策全まとめ!居飛車でゴキゲン中飛車を迎え撃とう!』でまとめています。ぜひ合わせてご覧ください。
なお、超急戦の定跡勉強について、腕に自信があるという方は将棋ソフトを利用してオリジナルの定跡研究をしてみるのがおすすめ。誰も知らない定跡を用意すれば、序盤・中盤はかなり有利に戦えることでしょう。将棋ソフトについては『おすすめの将棋検討ソフトを徹底比較!市販ソフトとフリーソフトは何が違う?』で詳しく紹介しています。