将棋のルールも一通り覚えて、駒を動かすのにも慣れてきたけどなかなか勝てない…。そんな方のために、この記事は将棋初心者が初心者を脱出し、級位者へとステップアップしていくための効率的な将棋勉強法・上達法について、将棋の考え方という視点と、実戦での読みや知識といった視点で紹介しています。初心者脱出を目指す方は、ぜひ参考にしてみてください。
何をすれば有利になるのかを知る(簡単な形勢判断)
将棋におけるすべての指し手の先には「相手より玉を先に取る」という目的があります。ですが、いきなり相手の玉を取れるわけがありません。相手玉を先に取るためには、その局面を少しずつ有利にしていくことが必要です。有利や優勢が積み重なって勝ちになっていくのが、将棋の基本です。
これと密接にかかわってくるのが将棋における「序盤」「中盤」「終盤」についてです。将棋の対局はこのように3つに分けられ、それぞれの局面で目指すべきことやするべきことが変わってきます。あわせて、こちらの記事もご覧ください。
次に示すものは局面を有利にするはじめの3つのポイントです。自分がそれをすることができれば有利になりますし、当たり前ですが相手にそれをゆるしてしまうと不利になります。具体的な上達のための勉強をしていく前に、まずはこれらを意識してみましょう。
駒得をする
駒の価値の高さはそれぞれ違います。例えば飛車と歩では飛車の方が何倍も価値があります。例えば自分の飛車と相手の歩を交換してしまった、となれば大損なわけです。逆に、相手の強い駒と自分の弱い駒を交換できれば相手の戦力を削ぐことができますし取った駒は自分の戦力となります。
駒を成る
ほとんどの駒は、敵陣に入って「成る」ことによってパワーアップします。例えば、飛車が成って龍になると利きが増え、その駒の価値も高くなります。考え方によっては駒得のひとつともいえます。自分の駒を成ることは得ですし、相手の駒を成らせることは損になります。
相手玉を追い詰める
将棋の基本は何度も言うように「先に相手の玉を詰ます」ことです。駒得や駒を成ることはたしかに局面を有利にしますが、直接的に勝利につながるわけではありません。それに対して「相手玉を追い詰める」ことはそのまま勝利に直結します。
駒得が重要になるのが序盤・中盤であれば、相手玉への距離が重要になるのは終盤です。別の言葉でいうと、序盤・中盤・終盤では形勢判断の指標が変わっているのです。極端な例を出すと、最終版で玉を挟み撃ちして追い詰める代わりに、遠くにある飛車や角をとっても何の意味もありません。つまり、将棋の終盤では、たとえ駒損してでも、相手玉を追い詰めるような手を続けていかなければならないわけです(もちろん自玉の安全さとの兼ね合いにもよりますが)。
結局何をすればいいのか
将棋の戦いを有利にする要素をまとめると、下のようになります。
・成駒をつくる(成駒を作らせない)
・相手玉を追い詰める(自玉を追い詰めさせない)
3つの要素を確認したうえで、これらを達成する力を身につける方法を考えます。結論から言うと、3つの分野に分けて勉強していくのがおすすめです。
戦法と囲いを覚える
戦法とは、一言でいえば「将棋の戦い方」。どのような方針で戦うか、何を目標に戦うかということです。敵陣の単純突破を狙う戦法もあれば、飛車交換から敵陣に打ち込んでいくのを狙う戦法もあります。先人の考えた勝つための近道が「戦法」です。
戦法はどれも狙いがはっきりしているので、戦法を覚えておけば目的を見失うことなく序盤・中盤を戦うことができます。戦法には大きく分けて2種類、「居飛車」と「振り飛車」があります。詳しいことはこちらからどうぞ。
戦法とセットになって出てくるのが「囲い」です。囲いとは、簡単に言えば玉の城のこと。玉が元の位置のままでは上からの攻めにも横からの攻めにも弱いので、玉が相手から攻められにくいように金銀で玉を固めていきます。もちろんすべての金銀を玉の守りに使ってしまうと攻めに使える駒が少なくなってしまうのでバランスを見ながら指す必要があります。
有名な囲いだと、「矢倉囲い(下図左)」や「美濃囲い(下図右)」などがあります。どちらも伝統のある、非常に人気の囲いです。
多くの囲いは戦法とセットです。この戦法にはこの囲い、といった感じで相性の良い囲いというものがあります。例えば矢倉囲いは多くの相居飛車の戦い(自分が居飛車で相手も居飛車の戦い)で使われますし、美濃囲いはどんな振り飛車の戦法とも相性が良い囲いです。
戦法は「将棋の戦い方」です。戦法の定跡を覚えずに闇雲に戦うのと、しっかりと定跡を勉強して戦うのとでは、やはり攻め方の質が変わってきます。囲いは守りに特化しているのでなかなかその価値を見出しづらいかもしれませんが、玉をしっかりとした囲いで守ってやることで、戦場から玉を遠ざけ、玉が狙われにくいようんいしています。玉を囲うのも不利にならないための重要な戦略です。
戦法や囲いについては、まずは自分の得意戦法を一つか二つ持って定跡を勉強し、その戦法にあった囲いを一つか二つ覚えるのがおすすめです。先ほどのリンクと同様ですが、こちらの記事では初心者におすすめの戦法や囲いを紹介しています。
もちろん、最終的には書籍を通じて学習するのがおすすめです。個々の戦法の書籍については上の記事で紹介していますが、もし戦法や囲い全般について、その全体像を理解したいのであれば、下のような本がおすすめです。
手筋を覚える
「手筋」とは駒のテクニックのこと。それぞれの駒の特徴を生かして、相手に技を仕掛けることができます。下図は田楽刺しとよばれる、香車を使った有名な手筋です。
上図では、先手は確実に飛車と角か、いずれかの駒を取ることができます。相手が何もしなければ香車を走って角を取れますし、角が逃げればその後ろにいる飛車を取れます。香車は歩に次いで弱い(価値の低い)駒ではありますが、一直線にどこまでも進めるという他の駒にない特徴を活かすことで、価値の高い飛車や角と交換することができます。飛車や角と香車の交換は、もちろん大きな駒得。相手の戦力をそぎつつ、自分の戦力を増し、戦いを優位に進めていくことができます。
すなわち、様々な駒の手筋を覚えることで、駒得をするテクニック、成駒を作るテクニック、そして相手玉を追い詰めるテクニックを身に着けることができるのです。
上のような手筋は一瞬で分かるぐらいが理想です。もちろんすぐにそうなるわけではないと思いますが、反復練習で体に染み込ませていきましょう。
おすすめなのは、初心者向けの次の一手形式の手筋本を何度も反復練習していくこと。次の一手形式なので、問題を解いて、答えを見て、という風にクイズ形式で進めていくことができます。
また、こちらの記事でも覚えておくと便利な攻めの手筋を紹介しています。
手筋は知っているだけで有利になる便利なもの。知らずに戦うのは損です。
詰将棋を解く
戦法・囲い・手筋の勉強と共におすすめなのが、詰将棋です。詰将棋は、下図のように、将棋の終局間近の局面から相手玉の詰まし方を考える問題です(通常必要のない駒は省かれています)。
この場合なら▲5二金と打って後手玉は詰み。つまり、答えは▲5二金です。今回は一手で詰ますことができるので一手詰となります。一手詰の問題の場合は非常に簡単ですが、三手詰、五手詰となると、相手玉を詰ます過程で双方の手を読む作業が求められるようになります。実はこれこそが詰将棋を解く大きなメリットの一つ。詰将棋を解いていく過程で、「時分がこう指したら相手はどう指すだろうか」というのは絶対に考えなければならないこと。
例えば下図。これは三手詰の問題です。
上図で例えば2二金と打つと、1三玉(下図)と逃げられて、これ以上王手が続きません。
上へ上へと逃げられてしまいます。正解は1三銀と、銀を捨てる一手(下図)。
もちろん相手は同玉とはできないので、同桂と取らせて逃げ道を封鎖してから2二金と打つことで、きれいに詰みとなります(下図)。
ただ闇雲に王手を続けているだけでは、詰将棋の答えにはたどり着けません。自分がこう指したら相手はどう指すだろうか、というのを常に考える必要があり、実はこの作業こそが「指し手を読む」ことです。多くの詰将棋の問題を解いてくことにより読みの力を鍛えれば、実戦でも数手先、最終的には数十手先を見越した一手を放つことができるようになるでしょう。
詰将棋を解くことで得られる能力としてもう一つ重要なのは、やはり詰みの形を覚えるということ。どんなに序盤・中盤がうまくても、相手玉の詰まし方を知らなければ将棋で勝つことはできません。簡単なものでもいいので、詰将棋をたくさん解いて、詰みの形を頭の中に蓄積させていきます。先ほどの三手詰は非常によく出てくる詰み筋で、「考えなくても一瞬で分かる」という人も多いでしょう。このような「知っている」詰み筋を増やしていくことが重要になってきます。
なお、詰将棋本は大量に出回っていますが、中には非常に難易度の高いものもあります。初めて詰将棋に取り組んでいくのであれば、最も簡単な一手詰、または読みの力を鍛えるための三手詰からチャレンジしていくのがおすすめです(慣れてきたら5手詰、7手詰とレベルアップしていきましょう)。おすすめの詰将棋本はこちらの記事で詳しく紹介しています。
実戦経験を積む
最後に、何だかんだ言って大切なのは実戦経験です(もちろんただ指しまくるのではなく、戦法・囲い・手筋を覚え、詰将棋を解きつつ、です)。定跡や手筋を勉強するだけではモチベーションの維持も大変ですし、何より将棋の一番の喜びは勉強した戦法や手筋を使って対局に勝利する瞬間でしょう。将棋道場に通ったり、友人と指すのもよいですし、将棋ウォーズなどの無料の将棋アプリを使うのもおすすめです。
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実戦をこなすのは、脳を将棋に慣れさせる、という意味でも効果的です。相手の駒の利きに気づかずに自分の駒をタダで取られてしまった…、という経験は初心者のうちなら誰にでもあります。しかし、棋力が上がっていくにつれてそういったことが無くなっていきます。なぜでしょうか…?それは脳が将棋に慣れてきて、駒の利きに敏感になってきたからです。
最後に
はじめは実戦・詰将棋・手筋問題の3つを軸に勉強するのに加えて、詰将棋で読みの力をつけつつ詰みの形を覚えていくのがおすすめです。
もちろん、実戦も重要。実戦だけでは将棋は上達しませんが、インプットするだけでも何事も伸びません。そして何より飽きてしまいます。じっくり考えて対局する機会を取ることができれば、将棋そのものへの慣れにもつながります。
今回はあまり触れませんでしたが、ソフトやアプリを活用していくのもおすすめです。おすすめの将棋ソフトや、スマホアプリについてはこちらの記事で紹介しています。