この記事では、初心者向けに絶対に覚えておきたい必修の「攻め」の手筋を紹介しています。手筋とは大まかに言えばうまい駒の使い方のこと。駒の特徴を活かして相手から大きなアドバンテージを奪います。特に今回紹介するこれらの手筋は実戦ではこれでもか!というほど出てきます。これらを知っているのと知らないのでは勝率も大きく変わってくるはずです。読みの能力とか、大局観だとかは実戦や詰将棋を通してじっくり伸ばしていくものですが、今回紹介する「手筋」というのは知ったもん勝ちです。
手筋は、その形さえ覚えてしまえばチャンスを見計らって一気に優勢になることができます。ただし、なかには相手に駒を渡してしまうなどメリットだけではない手筋もあります。相手から何か切り返される手はないか、など慎重に読み進めていくことが大切です。また、指し手をもっと読めるようになると受身の姿勢で手筋が使える局面を待つのではなく、自分から手筋が使える局面に誘導する、なんてこともできるようになります。歩をうまく使って相手の駒を乱してから手筋の一着を放つ..みたいな感じ。
攻めの必修手筋20
飛車の両取り(十字飛車)
将棋の駒の中で一番強力な駒「飛車」。縦横無尽に動けることを利用した、飛車にしかできない両取りの手筋があります。
ここでは▲2五飛、もしくは▲8二飛と打つことで、十字飛車と呼ばれる両取りの筋がかかります。
5二の銀と8五の角の両取りになっていて、銀が逃げれば角を取れますし、角が逃げれば銀を取ることができます。成功すると大きなアドバンテージを得られるので、チャンスがあればどんどん狙っていきましょう。
角の両取り
角の両取りも飛車と並んで非常に強力です。特に、振り飛車を指している人なんかは角の両取りをする機会が多いと思います。
上図では△5五角と打って一気に後手優勢です。飛車銀の両取りとなっています。角の両取りの派生で「王手飛車」なるものがありますが、これは有名ですよね。
この図の場合は、無条件で相手の飛車を取ることができます。相手が角を持っている場合は、玉と飛車のコビンに注意しましょう。
割打ちの銀
割打ちの銀は銀の斜め後ろへの利きを利用し、相手の駒を剥がす手筋です。
ここで▲4一銀が割打ちの銀と呼ばれる手筋です。以下△4二飛▲3二銀成△同飛で駒の損得こそないものの、後手の駒を一枚剥がすことができました。「相手の駒を剥がす」というのもまた難しいのですが、相手陣から駒をなくせば、隙が生じやすくなりますし、相手玉が薄くなることにもつながります。ただし相手に銀を渡してしまうのがデメリット。相手に銀を渡しても大丈夫な局面で使いましょう。
たすきの銀(角)
たすきの銀も、銀が斜めへの利きを利用して両取りを狙う手筋です。ターゲットとなる駒は飛車と金です。例えば下図。
ここで▲7二銀と打てば、飛車と金のどちらかがタダで取れることは確定です。もちろん角でも代用が可能です。
ふんどしの桂
桂馬の特殊な動きを活かして両取りを狙うのがふんどしの桂の手筋です。
次は△5三桂不成!とすれば見事に金の両取りとなります。片方の金が逃げれば、もう片方の金を取ることができますね。
田楽刺し
香車の有名な手筋です。角と飛車が一直線に並んでいるときに使える手筋です。
角を逃げたとしても、奥の飛車を取られてしまいます。まっすぐと遠くまで利かせられる香車の特徴をうまく生かしています。また歩がその筋に打てない、もしくは相手が歩切れであるときにも有力です。
こんな感じで狙う駒が金銀でも大丈夫。田楽刺しの応用筋はたくさんあります
垂れ歩
いよいよ歩の手筋です。歩はすべての駒の中で一番弱い駒ですが、その分手筋は豊富です。垂れ歩は打ったその場では効果を発揮しませんが、その次の自分の手番の時に大きな効果を発揮してくれる手筋です。
この局面では▲2四歩が厳しい一着。次に▲2三歩成とできれば、角金両取り駒得が確定で一気に有利に持ち込めますし、後手には適当な受けの手段がありません。こんな感じで一歩後ろに歩を打って、次にと金づくりを狙うのが垂れ歩です。直接▲2三歩と打ってしまうと、角を3一に逃げられておしまいです。
たたきの歩
歩の手筋の中でも特によく出てくる手筋です。相手の駒の正面に歩を打って、相手陣を乱すことを狙います。一見ただの歩損のようですが、深い狙いが秘められています。例えばこの局面。
次の一手は▲4三歩です。後手がどう応じても竜で銀を取ることができますし、取らなければ歩で金を取れます。こんな感じに、歩1枚で相手陣を崩すことができます。相手陣を崩す以外のも様々な用途があるので、覚えておくと本当に便利です。
継ぎ歩
継ぎ歩は、相手の歩を吊り上げる手筋です。例えば下の局面。
ここでは▲2四歩△同歩▲2五歩とするのが手筋です。こんな感じで歩を吊り上げていきます。▲2四歩に△同銀なら▲5五角でOK。▲2五歩に△同歩は▲同飛で、桂馬と銀の両取りとなって先手大成功です。継ぎ歩は、十字飛車と組み合わせて使われることが多い手筋です。もちろんその他にも様々な用途があります。
拠点づくりの歩
拠点づくりの歩は、相手陣の近くに歩の拠点を作ることです。拠点といってもわかりづらいと思うので、実際の局面を見ながら解説していきます。例えばこの局面。
次の一手は▲4四歩。同金もしくは同銀は同角から二枚替え(角一枚と金銀二枚では金銀二枚の方が価値が高い)です。金を引かせれば、見事拠点づくりに成功。4三に駒を打ち込んで攻めていくことができます。ただし、後でこの歩を回収されないように注意が必要。打った歩を取られてしまっては意味がないですからね。
角打ちの隙をつく
飛車から竜になるのはそう簡単には成功しませんが、馬をつくるチャンスは豊富。特に角交換系の将棋では、相手が一瞬でも隙を作れば角を打ち込んで馬を作っていきましょう。手筋というほどの手筋でもないですが、将棋を指す中で「馬は作れないか」とアンテナを張ることは重要です。
こんな感じに角を打てば、次の角成を同時に受ける術がありません。もちろん急に形勢が良くなるわけではありませんが、馬をつくるだけで中央が厚くなってそう簡単には負けない構えになります。
数の攻め
将棋の基本の考え方、数の攻めです。下図は数の攻めを有効に活用している棒銀戦法の局面図です。
この段階で、先手の2筋突破は確実になっています。2三に利いている駒の数は後手が金一枚なのに対して、先手は銀と飛車がにらみを利かしています。▲2四歩△同歩▲同銀で2三に歩を打っても、同銀と取られるだけで同金と取り返すことができません。このように、一点に駒の利きを集中して攻めかかるのは非常に有力です。飛車一枚で攻めるのではなく、銀と一緒に(さらには桂馬)で攻めるのが将棋の攻めの基本です。
角筋を活かした手筋
角筋を活かした攻めの怖いのは、歩を「取れない」ところ。こちらも具体的な局面から見ていきます。
後手玉が先手の角筋に入っている点がポイント。これは角筋を活かした攻めのチャンスです。次は▲3四歩が厳しい一着。後手は同歩と取れない(取ると王手)ですね。相手が放置してきても▲3三歩成から△同銀にも△同桂にも▲3四歩と打って駒得確定です。
挟撃の手筋
序盤中盤の手筋は大方終わらせたので、終盤戦、特に寄せの場面で役立つ手筋をいくつか紹介していきます。寄せとは、戦いが一通り終わって「さてどうやって玉を捕まえるか」といった局面で、どうやって実際に玉を追い詰めていくか、ということです。寄せといっても色々あるのですが、まずは相手玉を絶対に逃がさないようにする手筋を紹介します。「玉は包むように寄せろ」と言われるように、片方からひたすら追っていくだけでは玉に逃げられてしまうことが多く、上手く相手玉を捕まえるためには挟撃(挟み撃ち)を狙うことが基本となります。
上図の局面で、さらに駒を足して左側から追っていくのはあまり良い手ではありません。ここでは▲2三銀のように、相手玉を包囲する手が正着となります。
こうなれば、後手玉は受けがありません。片方面から追っていくよりも、圧倒的に効率の良い寄せ方です。
送りの手筋
送りの手筋は、竜と金駒(金銀)の組み合わせで寄せる手筋です。
実はこの局面、即詰み。▲8二金△同玉▲6二竜△7二合▲7一銀△9二玉▲7二竜で、7手詰めです。ポイントは初手の▲8二金。金を捨てて玉を奥へ送り、銀を代わりに持ち駒にします。銀を持ち駒にすれば即詰みが発生するわけですね。
囲いの金を狙う
「囲いの金を狙う」、これは相手の囲いを崩す基本的な手筋です。
上図は矢倉に対する攻め筋ですが、ここでは▲4一銀と銀を金の斜め後ろに引っ掛けるのが囲いの金を狙う一手。後手が何もしなければ金を取って相手の守りを一枚剥がすことができますし、△3一金と避けた場合にも▲5二銀成とすれば角の逃げ場所がありません。
頭金
最後に、将棋の最終盤、詰みの基本的な手筋をいくつか紹介します。下図は、もっとも大切な将棋の詰みの手筋である頭金です。こんな感じで、頭金を支える駒+金で相手玉を詰まします。
▲5二金までの1手詰みですね。
美濃崩しの詰み(角+桂)
有名な美濃崩しの手筋で、角筋を活かした攻めを応用しています。
上図は即詰み。▲7四桂△9二玉▲8二金の3手詰めです。▲7四桂に△同歩はできません(王手)。美濃囲いは8二の地点に利きのない囲いなので、一回でも王手がかかると意外ともろいです。うっかりしやすい筋でもあるので、振り飛車党の方は注意しましょう。
開き王手
開き王手も、覚えておきたい詰みの手筋の一つです。空き王手は、自分の駒の利き(主に飛車角)の間にある自分の邪魔駒をどかして王手をする、というもの。
上図では▲4三角成が開き王手の詰み筋で、後手玉は詰みます。合い駒は同竜または同馬で問題ありません。
逃げ道封鎖+角
逃げ道封鎖は、居飛車を持っても振り飛車を持っても良く出てくる手筋。今回は居飛車側をもって解説します。
後手が端歩を突いていなかったら▲7一角△9二玉▲8二金で簡単なのですが、今回は端歩がついているせいで上部脱出されてしまいます。ということで、一工夫が必要。正解は▲7一角△9二玉▲9三香△同桂▲8二金までの5手詰み。△9二玉に対する▲9三香がうまい一手で、後手の唯一の逃げ道である9三の地点を駒を捨てることによって封鎖しています。以下は△同桂~▲8二金で簡単ですね。