棋譜並べというのは、昔からあるまさに「王道」ともいっていいような将棋の勉強法です。伝統的な?やり方は、盤駒を用意し、棋譜集を開き、終局まで並べていくというもの。目的は棋士の指し手を手になじませ、プロ棋士の大局観や考え方を学ぶことです。
最近では日本将棋連盟が公式で出しているような棋譜アプリ(下記)もあるので、わざわざ本を買って勉強する意味は薄れているかもしれません。
将棋連盟ライブ中継
Japan Shogi Association無料posted withアプリーチ
ただ、今回紹介するような「自戦記」「棋譜集」のメリットというのは、その将棋を指した本人が考えたことを吸収できるという点になります。将棋の指し手の勉強だけでなく、単に読み物としても楽しむことができます。また、誤解されやすいのですが、必ずしも自戦記や棋譜集は最新のものでなくても構いません。何十年も前の棋譜を並べることにだって意味があります。多少古い形でも(むしろその方が)、指し回しの勉強になるような気がします。
何十冊も棋譜集を買いまくる必要はないと思いますが、数冊は手元に置いて、いつでも並べられるようにしておくとよいと思います(脳内再生というのも一つのやり方です)。
1.永世竜王への軌跡
渡辺明名人の永世竜王獲得への道のりを描いた自戦記集で、41局を収録しており、かなりのボリュームです。そのうち特に印象深い10局を細かく解説しています。2009年と多少古いですが、気にしなくてもOK。居飛車党はもちろん、振り飛車党でも将棋指しなら絶対に持っておきたい一冊。初心者~中級者でも読み進めやすい内容で、有段者はもちろん級位者の方にもおすすめです。
2.藤井聡太全局集
流行りに乗っているようで申し訳ないですが、このシリーズは将棋好きなら必読です。まず内容の面で注目したいのは、非常に内容が新しいということです。これは決して最新の定跡を使っている、というだけのことはありません。藤井先生は棋士の中でも若手で、ソフトを用いた研究を小さなころから積み重ねてきたとのことで、指し手一つ一つに「現代将棋観」があります。口で説明するのは難しいのですが、何というか「人間には到底させないような大胆な手」を鋭い読みと大局観でバッサバッサと指すのです。
見てわかるように、何年分も出ています。すべて読む必要はさすがにないような気もしますが、プロ入りしたての時期と、タイトルを取ってからの指し手の雰囲気を比べてみるのも楽しそうです。
3.菅井ノート 実戦編
ぶっちゃけ棋譜並べの「戦型」は気にしなくてもよいと思っています。居飛車党が振り飛車の棋譜並べをするのも、振り飛車党が居飛車の棋譜並べをするのも、どちらもアリです。ただし、これまですべて居飛車党の棋士の自戦記を紹介してきたので、ここでは一冊、振り飛車メインの自戦記を紹介しようと思います。
菅井ノートというのは、菅井先生による振り飛車の定跡本シリーズです。実戦編の他に先手編・後手編・相振り編の三シリーズが発売されています。もちろん、これらも定跡本としておすすめです。
自戦記となっているこちらの「菅井ノート 実戦編」は、戦法としてはゴキゲン中飛車や石田流などの現代振り飛車メイン。先手編や後手編で紹介した自身の研究がどう実際の対局で使われているか、を学ぶことができます。
おまけ風の紹介で恐縮ですが、現代振り飛車ではなく角道を閉じたノーマル振り飛車メインの自戦記が欲しいというかたには、久保九段のこちらの棋譜集もおすすめです。
4.大山康晴名局集
○○(棋士名)名局集というのはたくさんの種類があり、大山先生以外にも升田先生や加藤一二三先生など著名なプロ棋士の方々の名局集も発売されています。
その中でも特に大山康晴名局集がおすすめな理由は、居飛車・振り飛車関係なく、その指しまわしにあります。「助からないと思っていても助かっている」という言葉が有名なように、大山将棋の特徴はその受けと粘り(だといわれています)。棋譜の雰囲気も、現代将棋とは全く異なるものですが、並べてみる価値は絶対にあります。
5.将棋戦型別名局集
これに限っては自分の指す戦法に合わせて買うべきとしかいいようがありませんが、一冊自分の十八番の戦法の棋譜集を持っておいてもよいと思います。収録されている戦法はあまり気にしなくてもよいといいましたが、それはあくまで全体的な大局観を身に着けるという意味での話。特定の戦法に特化した棋譜を並べることで、その戦法独特の考え方、攻め方、受け方を学ぶことができます。
最後に
これはそこまで重要ではありませんが、可能であれば紙の本ではなく、電子書籍版を買うことをおすすめします。理由は2つあり、
1.将棋戦型別名局集は単純に分厚くて重い
2.電子書籍の方がお財布にやさしい
特に気を付けたいのが2.のお金の問題。電子書籍の方が大体1000円くらい安いのですが、それに加えて8つ出ている戦型別名局集のうち穴熊・四間飛車・中飛車・横歩取り・居飛車穴熊の5冊はKindle Unlimitedの対象です。つまり、Kindle Unlimited 読み放題のサブスクリプションを始めると、無料で楽しむことができます。