将棋には様々な戦法や囲いがありますが、戦法や囲いの威力を最大限に発揮するためには、それぞれの戦法と囲いを正しいコンビネーションで用いなければなりません。つまり、戦法や囲いの特徴によって、相性というものが決まっていて、相性に合った囲いと戦法の組み合わせを選ばないと、逆に戦いが不利になってしまうのです。
戦法と囲いの「相性」の考え方
自分の戦法と自分の囲いの相性
まず第一に、自分の指す戦法と自分の作る囲いの相性について考える必要があります。囲いというのは、戦場、つまり飛車のいる場所から離れた場所につくるのが原則ですので、居飛車で戦う場合には玉を左側に、振り飛車で戦う場合には玉を右側に動かすことになります。なので、囲いは大まかに「居飛車の囲い」と「振り飛車の囲い」という風に分けられています。
居飛車の囲い(玉が左側) |
振り飛車の囲い(玉が右側)
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矢倉・左美濃・舟囲い・中住まい |
相手の戦法と自分の囲いの相性
囲いを選ぶ際に自分の戦法だけ見て決めていいのであれば話は楽なのですが、実際にはそんなことはありません。自分の戦法によって囲いの大まかな場所は決めることができるのですが、その中からさらにどの囲いを選ぶのかは、相手の戦法を見極めてから決める必要があります。
囲いにはそれぞれ強み、弱みがあるため、相性を考えるうえでは囲いがどの方向からの攻めに強いのか、そして相手はどの方向から攻めてくるのかを考える必要があるのです。
横から攻めてくる相手には横からの攻めに強い囲いを用いる
まず、横から攻めてくる相手には横からの攻めに強い囲いを用います。横から攻めが飛んでくるのは、主に対抗形、すなわち居飛車VS振り飛車の戦いです。下図を見てみると、飛車の位置がずれているので、お互いが飛車を使って攻めている場合は相手玉を横方向から攻めることになることが分かります。
つまり、対抗形の場合、居飛車側は玉を左側に置いて、かつ横からの攻めに強い囲いを用い、振り飛車側は玉を右に置いて、かつ縦からの攻めに強い囲いを用います。
縦から攻めてくる相手には縦の攻めに強い囲いを用いる
その一方で、縦から攻めてくる相手には縦の攻めに強い囲いを用います。「縦から攻めてくる」というのは、対抗形でない場合、すなわち両方が居飛車の相居飛車や、両方が振り飛車の相振り飛車のこと。居飛車をもって指す場合は玉を左側に置いて、かつ縦からの攻めに強い囲いを、振り飛車をもって指す場合は玉を右側に置いて、かつ横からの攻めに強い囲いを用いることになります。
その他の重要な要素
とはいったものの、実際にはそれ以外に考えなければならない要素がでてきます。ここでは主に4つ紹介していきます。
戦いの激しさ
まず、飛車角が宙に舞うような激しい戦いをする戦型の場合は、そもそも玉を固く囲っている暇がないでしょう。そのケースでは、「中住まい」や「中原囲い」などの、短手数で完成し、かつ玉が左右に広い囲いを用いるのがほとんどです。振り飛車をもってこのような囲いを使うケースはめったにありませんが、相居飛車の相掛かりや横歩取りでは頻出です。
急戦か持久戦か
急戦とは、玉の守りはほどほどに戦いをすぐに起こす指し方、持久戦とは、玉をしっかりと固めてからゆっくりと戦いを起こす指し方を言います。囲いの強さだけ見たら持久戦調に、玉を固く囲ったほうがよいように映りますが、実際にはなるべく早く戦いを起こして主導権を握りたいような場合も多いでしょう。その場合は、「舟囲い」などの、あまり固くはないものの、短手数で完成する囲いを用いることがあります。
角交換の有無
囲いの中には、バランスの良い囲いもあれば、バランスの悪い囲いもあります。例えば角換わりという、お互いが角を手にする相居飛車の戦型では、通常の金矢倉ではなく、金をより低い位置に置き角の打ち込みに備えた「かぶと矢倉」「へこみ矢倉」といった形が用いられます。こういった矢倉の形は相居飛車だけでなく、対角交換四間飛車の戦いでも用いられることがあります。逆に、お互いが角を持ち合った将棋で穴熊に組んでいくのはあまりよしとはされていません。穴熊は駒を1か所に集めてしまうような囲いなので、自陣全体のバランスを崩し、角の打ち込みの隙を作ってしまうのが理由です。
囲いの特徴を分かりやすくした表
以上の説明をもとに、囲いの特徴を分かりやすく整理してみると、下表のようになります。
縦からの攻めに強い | 横からの攻めに強い | 両方に強い | どちらにも弱い | バランス重視 | |
居飛車の囲い(玉が左) | 矢倉系の囲い | 左美濃系 | 居飛車穴熊 | 舟囲い | 中住まい系 |
振り飛車の囲い(玉が右) | 金無双・右矢倉など | 美濃囲い系 | 振り飛車穴熊 |
縦からの攻めに強い囲いは、相居飛車や相振り飛車で用い、横からの攻めに強い囲いは対抗形の戦いで用います。両方に強い穴熊系の囲いはどんな戦型でも用いることができますが、バランスが悪いため角をお互いに手にした将棋では用いないのが無難ですし、手数もかかるので相手の動きをしっかりと見ておく必要があります。舟囲いはどちらにも弱い囲いですが、手数がかからず、早い攻めが可能になるので人気です。また、居飛車の一部の戦型では中住まいなどの、バランス重視の囲いも用いられます。
振り飛車については、非常にシンプルです。振り飛車は居飛車相手であれば美濃囲いを用いていれば間違いはなく、さらなる固さを求めるのであれば、振り飛車穴熊を勉強してみても良いでしょう。相振り飛車の戦いでは、縦からの攻めへの耐性では右矢倉が強力ですが、美濃囲いでも十分に戦えます。
まとめ
今回は、将棋の囲いと戦法の相性、そして使う囲いを戦法に合わせてどのように選んでいけばいいのかを解説しました。
いちいち考えるのは大変…という方には、『初心者におすすめの囲いを5つ紹介!簡単に組めて勝率UP!』で紹介している5つの初心者におすすめの囲いを覚えるのがおすすめです。
難しいことを考える必要はなく、居飛車を指すのであれば3つ、振り飛車を指すのであれば2つの囲いを覚えて、相手の戦型に合わせて使い分けていけばOK。