【将棋】有力な四間飛車対策総まとめ20+おすすめ棋書

王道の振り飛車、四間飛車。角交換系の「攻める」振り飛車がメジャーになりつつある一方で、古くから続くノーマル四間飛車も広く使われています。四間飛車は「守り」の戦法とされていましたが、藤井システムなどの開発で必ずしもそうとは言えないような状況です。

居飛車党はじっくりとカウンターを狙う四間飛車と藤井システムのようにガンガン攻めてくる四間飛車の両方に対応することが求められます。今回は、居飛車視点で有力とされている四間飛車対策20個と、四間飛車対策のおすすめ棋書を何冊か紹介します。基本的には先手視点です。

四間飛車について

「まずは敵を知る」ということで、四間飛車の基本について軽くまとめておきます。ノーマル四間飛車は、7六歩ー6六歩ー6八飛と、角道を止めて飛車を6筋に振る戦法です。

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四間飛車側としては、大きく美濃囲いに囲う戦い方と(下図左)振り飛車穴熊に囲う戦い方(下図右)の二種類があり、どちらも人気です。

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盤面左側の陣形についてのバリエーションは少なめですが、銀を5六に使っていく形(下図左)や、左金を二筋の守りに活用していく形(下図右)など、個性の出るところです。

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近年は居飛車の持久戦策(玉を固く囲う作戦)に苦戦していますが、藤井九段の生み出した藤井システム(下図左)や角交換四間飛車(下図右)など、有力な作戦も複数生み出されています。

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四間飛車について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

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居飛車側の作戦の分類

居飛車側の四間飛車対策は、以下のように、大きく4つの種類に分けることができます。

・対振り急戦

・対振り持久戦

・位取り

・対振り力戦

対振り急戦は、玉を軽く囲い、速攻を目指していく戦い方。攻め筋がシンプルで、初心者から有段者まで幅広くおすすめできる作戦です。対振り急戦の例は、4五歩早仕掛けや急戦棒銀など。伝統のある作戦が多いです。

それに対して対振り持久戦は、玉を固く囲い、固さで勝負する戦い方。玉の固さを活かし、多少乱暴な攻めでもうまくつないでいきます。対振り持久戦の中では居飛車穴熊がダントツで人気です。対振り持久戦はプロ棋士間では人気ですが、指し回しにはかなりの技量が必要なので、あまり初心者の方にはおすすめできません。有段者向けの作戦といった印象です。

他にも位取りと力戦の2種類が残されていますが、最も広く使われている作戦は急戦と持久戦です。位取りと力戦については、詳しく後述します。

居飛車急戦による四間飛車対策

最もシンプルで攻撃力のある四間飛車対策。その反面玉は薄く、一気のカウンターに弱いのが弱点。序盤でリードを大きく奪い、終盤に美濃の固さで逆転されないようにします。主に対美濃囲いの作戦として有力です。もちろん穴熊に対しても有効ですが、玉の囲いの差が大きくさすがに勝ちづらいので、穴熊に対してはのちに詳しく紹介するような持久戦策がさらにおすすめです。

4六銀左急戦

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7九の銀を、6八→5七→4六と左から繰り出していく急戦です。斜め棒銀ともよく呼ばれます。ただし△4五歩の捌きの突き出しが直接銀に当たってくるのが弱点。

上図からは▲3五歩と早速仕掛けていきます。終盤まで研究されているような激しい変化もあるので、研究好きの方は面白いかもしれません。詳しくはこちらの記事で解説しています。

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4五歩早仕掛け

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軽い仕掛けが魅力の4五早仕掛け。上図は▲4五歩と仕掛けた局面、後手はこの歩を取れないので、△6四歩のような感じで待機をしてきますが、先手も▲3七桂と力をためて本格的な戦いにはいります。

ただし実戦だと後手が工夫して△5四歩を保留してくることが多いです。4五歩早仕掛けは△5四銀~△6五銀と玉頭方面に銀を進出してくる玉頭銀が天敵なので、仕掛けは△5四歩を待ってからの方が安全です。

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棒銀

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王道の四間飛車対策です。左銀は5七で待機し、右銀を3七~2六と使っていきます。4五の突き出しが銀に当たってこない点が長所ですが、その反面棒銀が遊んでしまいやすいのが短所。棒銀を遊ばせないようにうまく働かせることが求められます。4五歩早仕掛けや斜め棒銀と並んで有力な作戦ですが、単純に見えて実は難易度の高い戦法です。

鷺宮定跡

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後手が△3二銀と待機した状態に対する定跡です。△3二銀は角交換後に角にヒモを付けている意味があり、相手の仕掛けを迎え撃ちやすいですが、その反面角頭が薄いので、鷺宮定跡では飛車を横に動かして角頭を狙っていきます。上図から後手が△4三銀と角頭を守った場合にも3五歩から仕掛けていきます。

持久戦

穴熊誕生後のプロ界での四間飛車に対する持久戦策は居飛車穴熊と左美濃(位取り除く)でしたが、ソフトによる研究や四間飛車側の新たな指しまわしに対する対抗策が考え出され、かなりのバリエーションがあります。戦場から遠く、囲いが固い点がメリットですが、その反面囲いを組むのに時間ががかかってしまいます。積極的に動いてくる指し方をする振り飛車党も多いので、なるべく隙を見せないように駒組みをします。

興味深いことに、「居飛車穴熊戦法」「左美濃戦法」などのように、対振りの持久戦策では用いる囲いの名前が戦法の名前となっています。もはや攻め方では区別せず、玉の囲い型で区別する点で、いかに玉を固く守るかという点に重点が置かれているかが分かります。

居飛車穴熊

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四間飛車対策の最強戦法・居飛車穴熊から見ていきましょう。終盤戦で威力を発揮する穴熊。固く遠いのはもちろんですが、王手がかからない形であるという点がさらに穴熊を凶悪なものにしています。上図のように右銀までくっつけて四枚穴熊にできれば理想です。要塞と化してます。

ただし穴熊は振り飛車側の対策も多め。単純な端攻めや角筋攻めなどはもちろん、藤井システムなどといった、居飛車穴熊対策専門の戦法まで考え出されています。特にアマチュア間の戦いでは定跡で居飛車指しやすいとされていても、細い攻めをつなげていくのが難しかったり、端攻めや角筋攻めが受けづらかったりと、実践的に勝ちづらい展開になることも多め。上級者向けの戦法といった印象があります。

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左美濃

天守閣美濃

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居飛車側の採用する美濃囲い風の囲いを「左美濃」と総称します。四間飛車に対しての対策として最も知られているのは、玉を8七に置く天守閣美濃の形でしょう。

振り飛車の採用する美濃囲い以上の固さと遠さを併せ持つ天守閣美濃。上図は天守閣美濃の理想形で四枚美濃とも呼ばれます。ここまでくると相当固いですが、実戦では銀が守りにくっついていなかったり金が6七にいなかったりということも多いので、期待は禁物。さらに、何と言っても玉頭が弱いのが弱点。実戦的には玉頭からの攻めが厳しく、勝ちづらい戦法だと思います。

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銀冠

左美濃系統の戦法しては、銀冠の形もよく使われます。美濃に用いられるのが天守閣美濃ならば、振り飛車穴熊によく用いられるのは銀冠。玉にかぶせる冠のように置かれた8七の銀が特徴の囲いです。

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上部が強く、8五へ歩を伸ばして穴熊に対して上から圧力をかけていくことも可能です。場合によっては穴熊に進展することもできます。

銀冠穴熊

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将棋ソフトによる研究でちらほらみられるようになった作戦です。銀冠に囲ってから、さらに穴熊に囲ってしまうというもの。端攻めや上部の攻めに対する耐久性があります。普通なら隙が生まれそうなものですが、銀冠穴熊では角道をあけっぱなしにすることで相手の攻めを牽制しています。角道を開けたままだと△6五桂が来るのではないかと思うところですが、その△6五桂の対策として生み出されたのが奇手▲6六角です。

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△6五歩と位を取られてしまうようですが、そのおかげで桂馬の両取りを回避できています。銀冠穴熊については、こちらの記事が詳しいです。

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ミレニアム

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元々は藤井システム対策の戦法でしたが、藤井システム以外の四間飛車にも普通に使うことができる戦法です。穴熊なみに堅く、さらに玉の位置が端ではないため角のライン攻めや端攻めに対する耐久力もあります。 

定跡の整備があまり進んでいない戦法ではありますが、こちらの記事では基本的な指し回しを解説しています。

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位取り系

位取りは5筋や7筋の位を取り(歩を5段目まで進め)、敵陣を圧迫していく作戦です。伝統ある有力な作戦ではあるものの、急戦のようにわかりやすい攻め筋があるわけでもありませんし、持久戦のように固い玉を武器に強い攻めができるわけでもありません。取った位を武器に、じわじわと優位を拡大していくような戦法です。アマ間でもプロ棋士間でも近年は穴熊の陰に隠れ、指されることはあまりありませんが、研究の余地のある戦法です。

5筋位取り

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天王山の5筋の位を取り、中央制圧を目指します。一例ですが、上図のようになります。相手が早い段階で△5四歩をきめている場合は位を取れないので、この戦法は使えません(その場合は4五歩早仕掛けが有効でしょう)。

玉頭位取り

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玉頭の位をとり、厚みをつくる玉頭位取り。序中盤で多少不利になっても玉頭戦で取り返せるのが強み。上図でもすでに7筋に拠点を作っています。相手の囲いの進展も防いでいるのが大きなポイントです。6筋の歩を切った後の金底の歩は固いので、横からの攻めに弱そうな陣形に見えても意外と持つことが知られています。

居飛車力戦による四間飛車対策

右四間飛車

四間飛車党の方もかなり悩まされているであろう右四間飛車。急戦も持久戦も考えられるのが厄介なところです。上図は持久戦の場合の局面です。

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右四間飛車は単純ながら攻撃力のある戦法なので、穴熊と組み合わさると対処は大変です。また、ソフトの研究で右四間飛車+elmo囲いの組み合わせも有力と見られています。

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奇妙な形のようですが、意外と横からの攻めに強いのがelmo囲い。穴熊ほど手数はかからず、それなりの固さを保っています。

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飯島流引き角

角を7九~5七と引き角にした上で、左美濃に囲います。銀を7八に上げることで角を引くスペースを作ります。

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振り飛車の美濃囲いと同程度の固さでありながら、引き角の攻撃力+コビンが空いていない、とても有力な戦法です。角を5筋に動かすためどうしても5筋が弱くなってしまうので、早い段階で仕掛けて相手に5筋攻めを指せる隙を与えないようにしましょう。

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クルクル角

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ソフトの生み出した最新戦法の一つです。こちらも引き角の一種といっても良いのですが、端から角を活用していきます。上図に至るまで、先手の角は9七~7五~5七と移動してきました。

番外編:藤井システム破り

右銀急戦

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急戦の一つとして考えられることもありますが、現代将棋での右銀急戦は藤井システム対策がほとんどです。5七に銀を上がるまでは穴熊の組み方と同じですが、その後は▲3五歩△同歩▲4六銀といった感じで素早く攻めていきます。

5五角戦法

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こちらも藤井システム対策の戦法です。右銀急戦の派生といっても良いかもしれません。藤井システムの△6四歩に対して▲5五角と出て△6三銀を強要します。△6三金なら横からの攻めに一気に弱くなるので一気に仕掛けて居飛車よし。△6三銀に対して一旦角を引く場合もあれば、▲3五歩から攻め込む場合もあります。どちらも有力で、プロ間でもよく指される藤井システム対策です。

おすすめ棋書

四間飛車対策の棋書一覧はこちら

四間飛車破り 急戦編 (著:渡辺明)

四間飛車破りの棋書はこれで十分といってもいいくらい内容の濃い棋書です。棒銀、▲4六銀左急戦、▲4五歩早仕掛けの3つの戦法の定跡についてかなり細かく解説しています。

四間飛車破り 居飛車穴熊編 (著:渡辺明)

同シリーズの居飛車穴熊版です。四間飛車の対応を△4四銀型、△5四銀型、△3二銀型に分けて居飛車側の指し方を解説しています。

居飛車穴熊についてはこの一冊で大丈夫だと思います。

堅陣で圧勝!対振り銀冠穴熊 (著:増田康広)

銀冠穴熊の棋書。銀冠穴熊の棋書は現段階ではこれしか出ていないと思います。あまり定跡の開拓されていない分野です。

飯島流引き角戦法 (著:飯島栄治)

飯島流引き角戦法の棋書。。四間飛車対策だけでなく、その他の振り飛車全般についても書いているので、いろいろな戦法に対して飯島流を応用していきたい人におすすめです。

すぐ勝てる!右四間飛車 (著:中川大輔)

中川八段はプロでは珍しい右四間飛車のスペシャリスト。そんな中川八段が右四間飛車舟囲い(急戦)、右四間飛車穴熊vs美濃、右四間飛車穴熊の3戦型について解説する棋書です。

美濃崩し200 (著:金子タカシ)

定跡書ではないのですが、居飛車党でまだ持っていない人は絶対に勝った方が良い棋書です。序盤研究ももちろん大切ですが、結局必要になってくるのは終盤力。

美濃崩し200は、美濃囲いの崩し方に焦点を当てた寄せの問題集です。本美濃から銀冠まで、横からの攻めでなく端攻めや上からの攻め方についてもわかりやすく解説しています。

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四間飛車対策
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公開日:2018年5月26日