【徹底解説】角換わり棒銀の基本定跡と攻め方

角換わり棒銀は、角換わりの中でも最も基本的な指し方の一つです。攻め方がシンプルで分かりやすく、破壊力があるのが魅力な反面、銀以外の攻め駒(特に桂馬)の活用が難しく、攻め筋が単調というデメリットがあり、プロ間で指されることはあまりありません。しかし、アマチュア間で非常に有力な戦法であることに間違いはなく、しっかりと定跡研究を進めていけば、有段者の間でも勝ち上がることのできるポテンシャルのある戦法です。

なお、角換わり全般の指し方や定跡については、『絶対に覚えておきたい!角換わりの定跡・戦法・囲いを徹底解説』でまとめているので、是非合わせてご覧ください。

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また注意点として、角換わり棒銀の定跡は、通常の棒銀(原始棒銀とも呼ばれる形)と比べると、攻め方が少し高度になってきます。通常の棒銀の指し方や基本的な攻め筋、また様々な棒銀の種類については『棒銀戦法の基本定跡と覚えておきたい攻め方を徹底解説』で解説しているので、ぜひ事前にご覧ください。

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角換わりの棋書については、こちらからどうぞ。

初手からの指し手

▲7六歩△8四歩▲2六歩△3二金▲7八金△8五歩▲7七角△3四歩▲8八銀(下図)

上図は、先手後手ともに角換わりの意思表示をした局面です。

以下、△7七角成▲同銀となって下図。

△2二銀▲2五歩△3三銀▲3八銀△7二銀▲2七銀(基本図)

銀は、中央ではなく、2筋方面に使っていきます。3八銀に代えて4八銀とすると、角換わり腰掛銀の展開になることが多いです。3八銀から、次は2七ー2六と棒銀の基本形を作っていきます。

棒銀の一番の狙いは、数の攻めによる2筋突破です。ただし、角換わりの場合は3三に銀がいる関係で、単純な2筋突破というわけにはいきません。ということで、角換わり棒銀では第一に攻めの銀と守りの銀の交換を狙います。こちら側の攻めの銀と相手側の守りの銀を交換できれば、相手の守りが薄くなる分こちらが有利です。銀交換が成立しない場合には、1筋へと攻めを広げていきます(端攻め)。

角換わり腰掛け銀に対しての指し方

角換わり腰掛け銀は、角換わりの序盤から4六(6四)の歩を突いて、銀を4七(6三)~5六(5四)へ上がっていく指し方です。銀が歩の上に乗っかている様子が腰掛けているように見えるために、この名前がついています。腰掛け銀は現在非常に人気で研究も盛んな戦法です。詳しい指し方については『角換わり腰掛け銀の基本定跡と指し方』で解説しています。

【将棋】角換わり腰掛け銀の基本定跡と指し方
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基本図から △6四歩▲2六銀(下図)

まずは、後手が悠長に構えてきた場合の指し方を見てみましょう。2七銀に対して、後手は6四歩から、腰掛け銀の形を目指します。角換わりにの三すくみによると、「棒銀>腰掛け銀>早繰り銀>棒銀」と、棒銀は腰掛銀に比較的強いことが知られています。しかし、実際には互角な戦いが続きます。

△6三銀(銀交換を受け入れる場合)

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まずは、後手が2筋での銀交換を甘んじて受け入れる場合の指し方を見ていきましょう。棒銀の最大の狙いはご存じの通り、3三の銀と棒銀の銀の交換です。攻めの銀と守りの銀を交換すれば、守りが手薄になる分だけ、攻めている側が有利です。

上図以下 ▲1五銀△1四歩▲2四歩△同歩▲同銀△同銀▲同飛△2三歩▲2八飛(下図)

2筋の銀交換を終えて、下図。1五銀に対して催促する1四歩に対しても、当然2四歩から突っ込みます。1五歩には2三歩成で先手当然よし。結局は銀交換に落ち着きますが、2八飛と引いた局面は既に先手指しやすい形勢。

先手は交換した銀を使って、様々な攻め筋を組み立てることができます。その一例は、端攻めです。

上図以下 △4二玉▲1六歩△5二金▲1五歩△同歩▲1三歩(下図)

端を突き捨てる手に対して、1三歩と垂らすのが狙いの一着。無視してくれば当然1五香と香車を進めます。同桂にも香車を走らせて歩を回収し、桂得は確実。同香には1二銀(下図)が厳しい一手です。

上図では、2一の桂取りと2三銀成を同時に防ぐ手立てが後手にはありません。桂馬を逃げれば2三銀成、2筋を受ければ桂馬を取っておいて、先手有利。

△1四歩(銀の進出を防ぐ場合)

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後手は1四歩とすることで、銀の進出を防ぐこともできます。銀の進出を第一に考えるのであれば、3五歩ー3六歩と、3筋を絡めて攻めていくことができます。

▲3六歩から▲3五歩

上図から ▲6八玉△6三銀▲3六歩△4四歩▲3五歩(下図)

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3六の歩を突く場合は、玉を6八に移動させるのは必須。将来の王手飛車を防いでいます。3六歩ー3五歩と歩を伸ばし、3筋で戦いを起こします。▲3五歩に対して同歩としてくれれば、同銀から棒銀の形に持ち込めます。銀交換を達成して、先手よし。

△7四歩▲3四歩△同銀▲3七銀(下図)

なので、銀を進出させないという意味で後手は3筋の歩を放置してきます。対して先手は歩を取り込んで、銀を引き、飛車の道を通しておけばOK。次の狙いは▲2四歩からの歩交換です。棒銀の狙いである速攻は成功せず、長い戦いになりますが、後手の陣形は崩れており、先手不満ありません。

▲1六歩から▲1五歩

それに対して、1四歩への伝統的な応手は、1六歩、1五歩からの端攻めです。

△1四歩に対して、▲1六歩△6三銀▲1五歩△同歩▲同銀△同香▲同香(下図)

1筋の歩を突き捨て、同香ではなく同銀と行くのがポイント。同香では、単に1三歩と受けられて続きません。狙いはあくまで端攻めです。同香に対して、次の1二香成を防ぐために、後手からはいくつかの応手があります。1三歩(穏やかな指し方)と1六歩(攻撃的な指し方)の両方を見てみましょう。

1三歩に対して

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1三歩は、比較的穏やかな一手で、後手は全てを丸くおさめることを望んでいます。1三歩に対しては、1二歩(下図)と垂らすのが定跡の一手。次の狙いはもちろん1一歩成とと金づくりです。

もちろんこの狙いを許してはいけないので、後手としては1一の地点に何かの駒を利かせる必要があります。例えば、2二銀と、3三の銀を引く手に対しては、▲8四香△同飛▲6六角(下図)の両取りが定跡の一手。

もちろん8四飛に対して飛車を逃がせば、8一香成としてこちらも先手優勢です。ただし、実際には後手からも強力な応手が存在しており、3三角(下図)と、角を合わせる手が有力です。

▲3三角成△同桂▲1三香成には、△3五角のカウンターがあります。▲3三角成△同金▲1三香成も、やや無理攻め気味。

8四角と飛車を取る手にはには2五角と香車を取っておいて後手問題なし。実質的には銀・銀・香と飛車の3枚替えで、後手に飛車を打ち込むすきがないことを考えると(8二飛にも7二銀でOK)、後手としても何も不満はないところです。

アマチュア同士の対局では飛車を持っていう方が勝ちやすいのがほとんどですが、形勢的には互角、やや後手有利の形勢です。手持ちの飛車が使いずらい展開になるのを嫌うのであれば、単に1九香(下図)と打って、あくまでも端攻めを狙いに、力を蓄えておくのもおすすめです。

なお、後手が銀引きに代えて、しっかりと2二銀と取った銀を打ち込んでくるケースも考えられます。

銀を自陣に使わせただけでも先手満足ですが、さらに後手の端を攻めることも可能。やはり、1九香(下図)と駒を足しておけば、数の攻めでこちらが負けることはありません。

1六歩に対して

1六歩は、1三歩とは一転変わって、香車のいなくなった1筋のすきを突こうという非常に攻撃的な一手。次の狙いは△1七歩成▲同桂△1九角(下図)と飛車を追っていくことです。

1八飛とすれば3七角成、2七飛や3八飛にも銀を打ち込まれ、王手飛車も含みにしたかなり苦しい展開になってしまいます。なので、1六歩に対して単純に香成とするわけにはいかず、一度▲1八歩(下図)と受けておく必要があります。

▲1八歩に対しては、△4四銀▲6八飛△1九角(下図)と、またしても飛車を狙ってきます。4四銀は飛車に圧力をかけ、かつ桂馬の逃げ道を用意した一手。

先手からは5六飛から5筋を狙う手順や、1二香成が残っていて、決して楽しみのない展開というわけではありません。ただし、角や銀で飛車を追われやすく、勝ちやすい勝負ではないと思います。

端攻めをする場合は、1六歩のカウンターが強烈です。定跡書的には互角な戦いであっても、飛車の狭い展開は実際にはあまり楽しいものではありません。ですので、個人的には3筋からの仕掛けと、その後に徐々にリードを重ねていくような展開にした方が勝ちやすいとは思います。

VS角換わり早繰り銀

角換わり棒銀に対しての、もう一つの有力な指し方は角換わり早繰り銀です。早繰り銀は3七(7四)の歩を突いて、銀を3七(7三)~4六(6四)へと進出させていく指し方です。3筋を突いている分、攻めの幅が広がっているのが特徴。詳しくは『角換わり早繰り銀の基本定跡と指し方』で解説しています。

【角換わり】角換わり早繰り銀の基本定跡と指し方
角換わり早繰り銀は、角換わり三大戦法「棒銀・腰掛け銀・早繰り銀」のうちの一つ。銀を3七~4六から繰り出していく形が特徴的...

基本図から △7四歩▲2五銀△7三銀▲1五銀△5四角(下図)

早繰り銀が有力な棒銀対策だといわれているのは、棒銀対策のかなめである5四角との連携が良いから。上図の5四角は、2七の地点をにらんでいます。上図から▲2四歩△同歩▲同銀などとしようものなら、△2七歩と打たれてゲームエンド(下図)。飛車を逃げると、銀がタダで取られてしまいます。これでは棒銀側大失敗。

5四角に対しての対策としては、3八角と角をこちらも打ち合う手が良く知られています(下図)。

▲3八角以下、△4四歩▲2四歩△同歩▲同銀△同銀▲同飛△3三金(下図)までが定跡の手順。

手順途中の4四歩は非常に重要な一手で、桂馬にひもをつけることによって、△3三金と飛車に当てて金を上げる一手を可能にしています。

△3三金に対して▲2六飛は△3五銀から飛車を再び追われ、▲2八飛は△2七歩があります。よって▲2五飛が最善。以下、△2四歩と歩を使わせてから▲2八飛と深く引いて下図。

ここまでが対早繰り銀の基本の定跡です。後手からは次に△2二飛▲2六歩(下図)とさせて、2筋を収める手があります。

その一方で、先手からも▲6六銀や▲7七桂から、中央の角と銀を狙って指していく展開があり、決して不満があるわけではありません。形勢は互角です。

対△2二銀型

特に銀交換を防ぐという意味では、3三の銀を2二に引いた、2二銀型も有力です(下図)。

後手は2筋と1筋の攻めに非常に強い形で、強行突破は不可能。しかしながら、後手玉は1筋方面に逃げ道がなく、かなりの悪形です。1筋2筋を余計に障ることはせず、桂馬も活用しつつ、3ー5筋の中央方面から攻めを組み立てていくのがおすすめ。

角換わり棒銀の攻めの手筋

ここまで複数の戦型に対しての基本定跡を紹介してきましたが、どの戦法を相手にしても使えるような攻めの手筋が存在します。いくつか覚えておくと便利です。

端攻め(▲1二銀)

先ほども一度紹介しましたが、この手筋は頻出です。香車を歩で釣り上げてから、銀を1二に打ち込みます。

端攻め(▲1二歩)

こちらも一度紹介してあります。銀がない時は歩で代用可能。どちらのケースでも、とにかく1一の香車を何としてもどかす、ということが大切になります。

▲2二歩ー▲6二角

こちらは本記事には出てきませんでしたが、角換わりで必修の手筋です。銀交換した後に、相手の金銀の連携が一瞬乱れます。その隙に、さらに2二に歩を打ち捨てることで、相手陣の連携をさらに崩すことができます。

△同金に対して、▲6一角と打ち込んで下図。

後手は、▲5三角成、▲8三銀、そして▲5二銀などの複数の狙いを一度に受けることができません。先手大優勢。

まとめ

棒銀は、「速攻」「破壊力抜群」と言われてはいるものの、実際の角換わり腰掛銀や早繰り銀に対しての定跡を見てみると、かなりじっくりとした戦いになりがちです。相手がしっかりと定跡を勉強している場合、棒銀による単純な数の攻めや端攻めが成功することはまずありません。これらも、棒銀がプロ間で指されることの少ない理由でしょう。

しかし、だからといって棒銀側が不利な戦いをすることになるのか、というと決してそうではありません。さらに、自分でオリジナルの研究をすることができれば、強い武器になることは確実です。

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羽生の頭脳 角換わりとひねり飛車(級位者ー有段者)

羽生の頭脳は、角換わり棒銀に特化した一冊というわけではありませんが、角換わり全般の流れを学ぶことができ、なおかつ角換わり棒銀にもかなりのページを割いてくれています。特に、角換わり早繰り銀に対しての変化が詳しいです。

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こちらの一冊は、いわゆる「次の一手」形式の書籍です。角換わり棒銀・早繰り銀・棒銀と満遍なくカバーしています。

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公開日:2021年12月15日