将棋のルールを覚えて、駒の動きにも慣れてきた。そんなときにぜひ勉強を始めてほしいのが、将棋の「戦法」です。戦法とは、一言でいえば戦法というのを一言で言えば「序盤の戦い方」。やみくもに戦っていても簡単には勝てないので、戦法の考え方に沿って指していくのが基本となります。
定跡とは?
戦法とは
戦法とは、先ほども触れたように、先人たちの生み出した「序盤の戦い方」です。棒銀戦法と呼ばれる戦法(下図)は、将棋で最も有名な戦法の一つ。その抜群の破壊力が特徴です。棒銀戦法の狙いは、銀と飛車の数の攻めで2筋(後手の角頭)を攻めること。角の頭は弱いので、理にかなった攻め方と言えます。
棒銀戦法について、詳しくは『棒銀戦法の基本定跡と覚えておきたい攻め方を徹底解説』で紹介しています。
定跡とは?
先ほど紹介したようなある決まった攻め方のことを「戦法」といい、その戦法の詳しい指し方の手順のことを「定跡」といいます。棒銀戦法という戦法の名前を知っているだけでは何の役にも立ちませんので、その指し方の手順(すなわち定跡)を勉強する必要があるのです。
定跡には様々な種類があり、中には難易度が非常に高いものも。例えば先ほど紹介した「棒銀戦法」は指し方が分かりやすく初心者にも簡単ですが、銀の使い方によっては「棒銀」ではなく「早繰り銀」「腰掛け銀」「UFO銀」などといった戦法にも分かれます。これらの戦法は棒銀と似ているようで違いが多く、指しこなすのは少し難しくなってきます。ですので、定跡書を選ぶうえでは、まず自分のレベルに合った戦法を選ぶのが重要になってきます。初心者向けのおすすめの戦法については、『将棋初心者向けのおすすめ戦法4選(居飛車・振り飛車別)ー 戦法と攻め方の基本』で詳しく紹介しています。
定跡書とは?
定跡書とは、その名の通り、将棋の定跡をまとめた書籍のことです。『初心者におすすめの定跡書まとめ!居飛車・振り飛車別に紹介してみる』などでも将棋の定跡について詳しく解説していますが、やはり最終的には本を買って勉強していくのがおすすめ。
しかし、どのような本を選んで勉強すればいいのか、どの本が良い本なのかというのはなかなか選ぶのは難しい…ということで、学びたい戦型別におすすめの定跡書を紹介していこうと思います。
居飛車の戦法を指すか、振り飛車の戦法を指すか決めよう
具体的な定跡について勉強していく前に、どのような戦法を指していくか決断する必要があります。将棋には二種類の戦法の種類があり、一つ目は居飛車、二つ目は振り飛車です。居飛車の戦法は、飛車を初期配置の場所に置いたまま戦う(下図左)のに対して、振り飛車の戦法は飛車を別の筋に動かして戦います(下図右)。
居飛車の戦法と振り飛車の戦法は全く異なるので、定跡の勉強を始める前にどちらの戦法を指したいのか、決めておくことをおすすめします(といっても重大な決断というわけではなく、どちらの戦法も指すことはできますし、居飛車から振り飛車、振り飛車から居飛車に変えることもできます)。
詳しくはこちらの記事で解説しているので、まだ自分がどんな(居飛車か振り飛車か)戦法を指したいのか決めていない場合は、何となくでもいいので、決めておくことをおすすめします。
>>【将棋入門】初心者におすすめなのは居飛車?振り飛車?【長年の論争】 – 日々頓死
おすすめの定跡書
居飛車党におすすめの定跡書
居飛車党が相手にする戦型は大きく分けて「相居飛車」と「対振り飛車」の2つ。居飛車党の方は、覚えることが多いとよく言われますが、それは確かにその通り。今回は、その複雑さをなるべく排除して定跡を勉強できるような手順を紹介していきます。
居飛車の戦法の概観を学ぶ
居飛車の戦い方にはどのようなものがあるのか、どのような指し方が出てきたかということなどが初心者向けに分かりやすくまとめられた本がこちらです。
定跡書というよりも、居飛車の序盤がだいたい理解できる本といってよいでしょう。このような本を買うのは必須ではありませんが、まだ何も戦法についてわかっていない状態では、一度大まかな概観を見てみるのもおすすめです。
棒銀戦法を学ぶ
居飛車を覚えたい初心者の方が買うべき(本格的な)定跡書の1冊目は、こちらの「居飛車は棒銀で戦え」です。
名前の通り、先ほども紹介した「棒銀戦法」の定跡書です。棒銀とは、銀と飛車による数の攻めで2筋突破を狙う、基本に忠実でありつつも破壊力は抜群の戦法。角換わり・矢倉・対振り、という居飛車党が経験するメインの戦型での棒銀の指し方を初心者向けに丁寧に解説しています。この1冊の内容さえカバーできれば勝ちまくれると思います。
高度な定跡を学んでいく(角換わり・矢倉・対振り)
棋力が上がっていくにつれ、棒銀戦法ではなかなか攻めきれないという場合も出てくるかもしれません(もちろん有段者になっても棒銀戦法を愛用する人はたくさんいますが)。そんな時は、攻めの幅を広げていく意味で、他の戦法を学んでみるのもおすすめです。
棒銀以外の戦法なら何を学んだらいいの?という問題ですが、相居飛車では角換わりと矢倉、対振り飛車では四間飛車破りを本格的に勉強していくことをおすすめします。棒銀戦法にフォーカスした定跡は、やや独りよがりというか、歩調を無視しているような印象はあります。将棋の定跡は相手の対話でもあるので、将棋特有の間の取り方であったり、仕掛けの仕方であったりを学びたいのであれば、棒銀以外にも視野を広げるのがやはりおすすめ。
振り飛車党におすすめの定跡書
居飛車と同じく、振り飛車と一口に言ってもいろいろあります。振り飛車の場合は居飛車と比べて個々の戦法の個性が強いので、振り飛車の中で指したい戦法によっても選ぶべき本は変わってきます。ここでは、初心者におすすめの振り飛車の戦法である四間飛車と中飛車に絞って定跡書を紹介していきます。
振り飛車の戦法の概観を学ぶ
先ほどと同様、自分の指したい戦法の大まかな流れを学ぶのは、いつでもおすすめ。
四間飛車を学びたい場合
四間飛車を学びたい場合は、藤井猛先生の「四間飛車を指しこなす本」シリーズがやはり一番おすすめです。
次の一手形式になっているので、苦なく読み進められる本です。続編も出ており、自分の定着に合わせて読み進めていけば確実に力はつくはずです。また、最近では著者の藤井九段が「四間飛車上達法」という新たな棋書を出しています。こちらも、四間飛車をメインで勉強を進めていくなら目を通しておくと良いでしょう。
中飛車を学びたい場合
中飛車も、四間飛車同様に初心者にも人気のおすすめの戦法の1つです。中飛車の棋書は四間飛車に比べるとやや少なめですが、基礎から学びたい場合は、こちらの「ひと目の中飛車」が一番おすすめ。
こちらは、中飛車を初歩から学びたい方におすすめの棋書です。中飛車(多少形は違いますが)はプロ、アマともに人気な戦法なこともあり、かなり高いレベルの棋書も多く本当の初心者向けの本は少なめです。そんな中、この本は主に初心者を対象に中飛車の攻め方や考え方をわかりやすく学ぶことができます。「指しこなす本」同様に次の一手形式になっているのも特徴です。
その他の振り飛車を学びたい場合
四間飛車や中飛車以外の振り飛車、例えば石田流や向かい飛車、角交換四間飛車なども人気の振り飛車の作戦です。個別に紹介しているとキリがないのでここでは省略してしまいますが、やはり意識しておきたいのは「自分のレベルに合った棋書を選ぶ」こと。
これに関して、個人的におすすめなのは、棋書のシリーズを確認することです。将棋の棋書にはいくつかのシリーズがあり、それぞれのシリーズで対象棋力が大きく違います。例えば、「○○徹底ガイド」は比較的上級者を対象にしているのに対して「これだけ勝てる○○」は初級者・初心者を対象にしています。棋書のシリーズについては『知っておくと便利な棋書シリーズまとめ』で詳しく解説しています。こちらの記事で対象棋力が初心者となっているものに絞って探してみるのがおすすめです。