【将棋】初心者におすすめの奇襲戦法(嵌め手)の定跡と基本的な指し方まとめ

将棋を始めて少し経った人が触れるべきなのは、将棋の「戦法」です。将棋の戦法とは、一言で言えば「将棋の攻め方」のこと。先人の努力によって、多種多様な戦法が考え出されています。その多くは綿密な研究のもとに考えられたものですが、その中にはいわゆる「奇襲戦法」と呼ばれる少し特殊な指し方あります。今回は、そんな奇襲戦法の指し方を一覧形式で紹介します。

奇襲戦法とは

奇襲戦法というのはその名の通り奇襲を目指す戦法。要するにハメ手です。相手の受け間違えを狙い、速攻を仕掛けていくパターンが多いでしょう。

もちろん正攻法であるとはいえませんが、相手がハマると一瞬で勝勢に持ち込むことができることもある、恐ろしい指し方です。ただし、正しく受けらえると攻め切れないというのも奇襲戦法の特徴。一発狙いであるという部分は少なからずあります。

マイナー戦法という言葉も、奇襲戦法と同じような意味で使われることがありますがこちらはあまり使われないだけで立派に一つの戦法として成立しているという印象です。「一発狙い」だけではないのが奇襲戦法との違い。マイナー戦法の定跡については、『実は超有力!おすすめなB級マイナー戦法まとめ』でまとめています。

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奇襲戦法を指すうえで、もちろんデメリットは多々あるのですが、奇襲戦法は初心者が勝つための近道でもあるというのも事実。しっかりと定跡を理解すれば、使っていて気持ちのいい戦法です。

一発狙いの指し方の奇襲戦法ばかりを指し続けるのは上達につながるわけではありませんが、「勝つ」という喜びを知るためには奇襲戦法を指してみるのも一つの手。上手に一発報いることができるかもしれません。なお、初心者向けのおすすめな戦法については『将棋初心者向けのおすすめ戦法4選(居飛車・振り飛車別)』でまとめています。

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今回は、初心者におすすめの4つの奇襲戦法について指し方を紹介していきます。おすすめの戦法を選んだ基準は以下の3つです。

①どのような相手にも使えるか
②自分から攻めていけるか
③ある程度指し方が確立されているか

こちらの基準で選んだ結果、おすすめの奇襲戦法は振り飛車が多めになってしまいましたが、ひとまずリストを見ていきましょう。

おすすめの奇襲戦法①:鬼殺し

鬼殺しは恐らく最も有名な奇襲戦法でしょう。早々と桂馬を跳ねて、飛車のコビン(斜め上)を狙っていきます。

初手からの指し手 ▲7六歩△3四歩▲7七桂△8四歩▲6五桂(下図)

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序盤から7七に桂馬を跳ねるというのは普通考えられない指し方。角道をふさいでしまっているうえ、桂頭を後になって狙われるようになってしまいます。

後手は△8四歩と飛車先を伸ばしてくるのに対して、先手は堂々と6五に桂馬を跳ねていくのが特徴的。次の▲5三桂不成が金の両取りなので、後手は△6二銀と5筋をカバーするくらいですが…。

以下 △6二銀▲7五歩△6四歩(下図)

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5筋を受ける手に対して、今度は▲7五歩から7筋に狙いをつけていくのが定跡の手順。これに対して後手は△6四歩から桂馬取りをかけるのが自然。

以下 ▲2二角成△同銀▲5五角(下図)

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タダで桂馬を取られていては面白くないので、ここは先手が大きく動きます。角交換からの▲5五角が左辺右辺どちらも標的に構える一手。この角打ちが2二の銀取りなので後手はそちらを受けなければならず、桂馬を取る余裕がありませんが、今度は6四の歩を取ることができます。

以下 △3三銀▲6四角△5二金右▲7四歩△6三金▲7八飛△6四金▲7三歩成(下図)

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▲6四角は▲5三角成を見た手でもあるので、金を上がって受けますがこれに対して▲7四歩が継続手。△同歩には飛車を取って必勝なので△6三金と角に当てつつ7筋を受けますが、▲7八飛とさらに利きを足せばOK。後手が角を取る手に対しても▲7三歩成とすれば先手優勢です。

ただし、実際には後手から金を活用して受けてくる対策定跡があり、相手がそれを知っている場合はうまく行きません。鬼殺しの定跡についてもっと知りたいという方は『絶対に覚えておきたい「鬼殺し戦法」の対策定跡まとめ』、鬼殺しの対策について学びたいという方は『奇襲戦法・鬼殺しの基本定跡と指し方』をご覧ください。

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おすすめの奇襲戦法②:早石田

早石田も良く名前が知られた奇襲戦法の一つ。鬼殺しとの共通点としては、7筋(飛車のコビン)攻めを狙っていくという点です。ただし序盤から桂馬を使っていくというよりは、歩を生かした攻めを繰り出していきます。

初手からの指し手 ▲7六歩△3四歩▲7五歩(下図)

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鬼殺しでは7七に桂馬を跳ねましたが、早石田の特徴は序盤早々に7筋の歩を突き越していきます。

以下 △8四歩▲7八飛△8五歩(下図)

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さらに飛車を7筋に振り、戦力を集中させていきます。後手もただ受けているだけでは勝てないので、△8四歩~△8五歩から8筋攻めを見せてきます。

以下 ▲4八玉△8六歩▲同歩△同飛(下図)

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後手が8筋の歩を伸ばしてくるのに対して、構わず玉を動かすのが早石田の特徴。もちろん後手は△8六歩▲同歩△同飛から飛車を走ってきます。▲8七歩とも打てないので、次に飛車を成られてしまうといきなり不利になってしまいます。ここでは先手から上手い一連の切り返しの定跡があります。

以下 ▲7四歩△同歩▲2二角成△同銀▲9五角(下図)

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突き越しておいた7五の歩を突き捨ててからの角交換が綺麗な手順。▲9五角と打って王手飛車がかかります。実戦ではここまで上手く決まることはそう多くないと思いますが、知って損ではない切り返しの手順です。

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▲4八玉に△6二銀(上図)などと8筋からの攻めを見せてこない場合には、▲7四歩△同歩▲2二角成△同銀▲5五角(下図)といった仕掛け筋があります。

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以下△7三銀▲7四飛から難しい戦いが続きますが、先手も十分戦える指し方です。早石田についても、詳しい本格的な定跡については『早石田戦法の基本定跡と覚えておきたい指し方』で解説しています。併せてご覧ください。

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おすすめの奇襲戦法③:アヒル戦法

アヒル戦法はアヒル囲いと囲いの名前で呼ばれることもありますが、囲いがそのまま戦法になっているような指し方。中住まい風の構え+端角+浮き飛車の形が特徴的です。大駒の打ち込みに対して極端に強い形なので、積極的に大駒交換を狙っていきます。

初手からの指し手 ▲2六歩△3四歩▲2五歩△3三角▲2六飛△8四歩▲9六歩△8五歩▲9七角(下図)

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このように、端角と浮き飛車の形をまず作っていきます。端角と浮き飛車の組み合わせは実は相性がよく、ちょうど端角の弱点である角頭の部分を飛車の横利きでカバーしています。

以下 △6二銀▲5八玉△3二金▲4八銀△4二銀▲6八銀△5二金▲7九金△4一玉▲3九金(下図)

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この形がアヒルの基本形。中央に玉を構え、左右を金銀で連結しています。一見奇妙な形で何とも脆そうですが、最大の特徴は先程も言ったように大駒の打ち込みに強いということです。

一例ですが、ここから▲3六飛(下図)と揺さぶる手が考えられます。

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3六飛は3四の歩取りになっているので△8四飛(下図)と受けるのが自然。

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これに対して▲7五角△7四飛▲7六飛(下図)とするのがうまい手順。角にヒモをつけるとともに、次の▲6六角を狙っています。▲6六角が成功すれば、大駒交換が避けられません。

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多少無理気味でも大駒交換が成立すれば有利になりやすいのが、このアヒル戦法です。その反面一度囲いに手がつくと脆かったりもするので、兼ね合いが必要です。

おすすめの奇襲戦法④:端角中飛車

端角中飛車は、5筋の飛車+銀+角のラインで5筋突破を強引に狙っていく戦法です。特に角のラインが強烈で、受けきるのは大変。

初手からの指し手 ▲5六歩△8四歩▲9六歩△3四歩▲5八飛△8五歩▲9七角(下図)

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端角中飛車の最大の特徴は、9七に設置した角。この角が5筋を睨んでおり、強力な攻め駒としての役割を果たしています。

以下 △6二銀▲5五歩△9四歩▲5六歩△同歩▲同飛△5三歩▲5六飛(下図)

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端歩を突いて9七の角に狙いを定めてくる手には飛車を浮いてカバー。この形が端角中飛車の基本定跡です。アヒル戦法でもそうでしたが、基本的に端角と浮き飛車は相性が良いですね。

ここから平凡に後手が玉を囲おうとした展開を見ていきましょう。

以下 △4二玉▲4八玉△5二金右▲3八玉△3二玉▲3六飛(下図)

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浮き飛車の利点としては、やはりこのような感じで相手に揺さぶりをかけることができるという点があります。次に3四の歩を取ることができれば歩得となりますし、後手がこの歩を守るには△3三玉と形悪く受けるしかありません。

こういった筋があるので、後手からは△5二金▲4八玉△3二金▲3八玉△4二銀(下図)といった感じで上部に手厚い形をつくる対策も有力です。

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この形に対しての速攻は難しいため、石田流(振り飛車の理想形:下図)に組み替えていくような指し方が考えられます。

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このような指し方になると、これは奇襲でも何でもなく、基本的な石田流の定跡に合流します。奇襲の狙いはなくなってしまいますが、ゆっくりとした戦いになり、もちろん両者互角のです。

まとめ

今回は、「鬼殺し」「早石田」「アヒル戦法」「端角中飛車」の4つの奇襲戦法の定跡をまとめました。鬼殺しと早石田については、さらに詳しい定跡をこちらの記事で解説しているので、ぜひご覧ください。

>>鬼殺しの定跡

>>早石田の定跡

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奇襲戦法・B級戦法
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公開日:2018年8月31日