【居飛車VS振り飛車】初心者におすすめなのは居飛車?振り飛車?

将棋界にはいくつもの結論の出ていない論争があります。そのうちの一つは、「最初に学ぶ戦法は何か」というものです。戦法というのは、要するに将棋の序盤の攻め方のこと。具体的には角をどこに置くか、飛車をどこに置くか、銀や桂馬をどうやって使うか、といった類の内容です。

戦法の数は星の数ほど、、とは言いませんが、実際何十もの種類の戦法が考え出されています。しかし、どの戦法も基本的には2つの大まかな種類に分けることができます。それこそが、「居飛車」と「振り飛車」で、居飛車と振り飛車どちらから学ぶべきか、というのは将棋指しの間でも意見の分かれるところです。

居飛車と振り飛車とは?

将棋の戦法は大きく分けると居飛車と振り飛車に分かれます。居飛車は、「居」という字の表すように、飛車を初期配置に置いたままの戦い方(下図左)。

それに対して振り飛車は「振」という字からもわかるように、飛車を2筋以外の別の筋に動かして(飛車を振って)戦う指し方です(下図右)。

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何となく局面図からも分かるように、居飛車はより直線的なイメージ。それに対して振り飛車はあえて飛車を最初に動かしてから戦うという意味で、少しおしゃれな指し方、そういったイメージがあります。居飛車では、玉を飛車の近くの戦場から離れさせるという意味で、玉を左側に移動させます。それに対して振り飛車では、飛車が左側にいるので、玉はその反対の右側に移動させます。様々な違いをまとめると下表のようになります。

居飛車の特徴 振り飛車の特徴
飛車が右側(初期位置) 飛車が左側
玉が左側 玉が右側
直線的でまっすぐとした戦い方
おしゃれで華麗な戦い方

将棋では、居飛車と振り飛車で大きく戦い方が違ってきます。しかし、居飛車の戦法同士、振り飛車の戦法同士は戦い方がかなり似通っているので、戦法を勉強する際にはまず「自分が居飛車の戦法を指したいのか、振り飛車の戦法を指したいのか」決めることがおすすめされています。将棋の戦法については『主要な戦法・定跡一覧(解説付き・居飛車振り飛車別)』で一覧をまとめているので、併せてご覧ください。

【将棋】主要な戦法・定跡一覧(解説付き・居飛車振り飛車別)
戦法とは 戦法とは、一言でいえば将棋の攻め方・戦い方の型のこと。将棋を指していて、相手陣をどのように攻略したらよいのか...

居飛車の戦法例

棒銀戦法

棒銀戦法は、居飛車対居飛車(相居飛車)の戦いでよく用いられる戦法です。飛車と銀の2枚の組み合わせで2筋(特に角頭の2三の地点)を狙います。飛車と銀の両方が攻めに加わっており、数の攻めの原則をうまく応用しています。

居飛車穴熊戦法

居飛車穴熊戦法は、居飛車対振り飛車の戦い(対振り飛車)で用いられることの多い戦法です。穴熊は、将棋の囲いの中でもトップレベルに固い囲いです。戦場から遠く離れた9九の地点に穴熊囲いを作り、盤面の右側でうまく攻めを繋げていくことを狙います。

振り飛車の戦法例

四間飛車

四間飛車は、飛車を左から数えて4列目(6筋)に振る振り飛車の戦法です。伝統的な指し方は、下図のように角道を止めてじっくりと組み合う指し方です。7七に上がった角が8筋をガードしているので、角交換を避ける意味で角道を止めるのが特徴です。激しく攻めていくことはせず、じっくりと相手の攻めを待って、カウンターを狙います。ただし最近は角交換をいとわない角交換四間飛車も人気です。

ゴキゲン中飛車

ゴキゲン中飛車は、近藤正和六段の開発した、中飛車の戦法の一つです(局面図では後手)。中飛車という名前の通り、飛車を5筋(真ん中)に振るのが特徴ですが、角道を4四の歩で止めることはしません。5五の歩が飛車と角の両方のラインを抑えており、良いタイミングで△5六歩と飛車角を一気に活用することを狙っています。

居飛車VS振り飛車の論争

プロ棋士の間でも、居飛車を好む棋士、振り飛車を好む棋士、(そして両方指す棋士)の2種類があります。前者を居飛車党、後者を振り飛車党といい、指し方、考え方などかなり分かれています。別にお互いに仲が悪いわけではありませんが、ライバル意識があるのは事実。自分が居飛車党なら居飛車党の棋士を、振り飛車党なら振り飛車党の棋士を応援することも多いです。

居飛車党・振り飛車党の有名棋士

居飛車党 振り飛車党
加藤一二三 藤井猛
谷川浩司 久保利明
羽生善治 鈴木大介
森内俊之 菅井竜也
木村一基 杉本昌隆
豊島将之 窪田義行
渡辺明 近藤正和
藤井聡太 佐々木慎

ちなみにプロ棋士の間の多数派は居飛車派。理由はいろいろあると思いますが、その理由の一つはソフトが「居飛車有利、振り飛車不利」と考えている点にあります。実際に、勝率を見てみると居飛車の方が振り飛車よりも良いことの方が多いです。しかし、これはプロ棋士間の話。アマチュアの世界にはそこまで影響しません。なので気にしなくても大丈夫です。

選び方のポイントは「勝ちやすさ」と「勉強のしやすさ」

居飛車か振り飛車かを選ぶうえでの重要なポイントは、勝ちやすさと勉強のしやすさです。これらは一言で「こっちがいい」といえるものではないので、それぞれの観点からじっくり比較をしていこうと思います。

勝ちやすさ

勝ちやすさは、一番わかりやすいパラメータでしょう。先ほどお話ししたように、プロ棋士の間での勝率が高いのは居飛車の戦法です。ソフトの評価が比較的高いのも、居飛車です。居飛車には飛車をわざわざ振るという一手が必要なく、さらに棒銀戦法など、比較的わかりやすい攻めをすることができるのが特徴。それに対して振り飛車は伝統的に「受け」の戦法。攻めの戦法と受けの戦法を比べると、勝ちやすいのはどうしても攻めの戦法です。その一方で、近年の振り飛車戦法は受け一辺倒というわけでは全くありません。先ほど紹介したゴキゲン中飛車や石田流などの戦法は攻める振り飛車として知られています。

その一方で、囲いの優秀さという点では振り飛車に軍配があがります。囲いとは王様を守るための城で、居飛車では飛車のいない左側に、振り飛車では飛車のいない右側に作ります。攻めやすさという観点からは居飛車が少し有利でしたが、守りやすさでいえば振り飛車も負けていません。居飛車側の有力な囲いには下図左の居飛車穴熊囲い、下図右の舟囲いなどがありますが、どちらも一長一短。居飛車穴熊は手数がかかるうえに玉の逃げ場所がなく、舟囲いは手数はかかりませんが脆いです。

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それに対して振り飛車は、下図の美濃囲いと呼ばれるバランスの良い万能な囲いを使うことができます。美濃囲いはおそらく将棋で一番優秀な囲いで、あまり手数がかからない割に囲いが固く、変形させていくことでいくつかの弱点を補うこともできます。振り飛車の一番のメリットは美濃囲いを使えること、といってもよいかもしれません(一応居飛車も美濃囲いを左右反転した左美濃囲いを使うことができます)。

勉強のしやすさ

勉強のしやすさとは、主に将来に向けての話です。例えば居飛車でいえば、棒銀戦法という初心者のうちは最強の戦法があります。先ほどと同じ局面図ですが、このように飛車と銀を連携させて攻めていくのが棒銀戦法で、居飛車相手にも振り飛車相手にも使えます。この2つの駒の連携は将棋の基本中の基本です。

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ただし、これが通用するのは初心者~級位者までというのが多くの場合現実。相手が強くなれば強くなるほど、棒銀側の弱点(囲いが薄い、攻めが単純すぎる、など)をついてきます。となると、別の戦法を学んでいく必要があります。

実は、これこそが居飛車党になるうえでの最大のネック。一言で表すと、「勉強量がとても多い」のです。居飛車対居飛車の相居飛車の勉強だけでなく、様々な種類の振り飛車(四間飛車・三間飛車・中飛車・向かい飛車…)に対しての指し方を勉強しなければなりません。

しかし、振り飛車の場合は違います。自分が四間飛車を指す、と決めたら四間飛車を極めればよいのです。居飛車対振り飛車の戦いになったときに、戦型を選択する権利があるのはいつも振り飛車です。振り飛車はトータルの勉強量がすくなめで、かつ何を勉強すればいいのかが明らかです。勉強がしやすいのは間違いなく振り飛車です。

居飛車と振り飛車の序盤を学ぶ

居飛車か振り飛車か、どちらを指すかを決めたら、さっそくそれぞれの戦法の定跡(覚えるべき序盤の指し方)を勉強していきましょう。初心者向けの居飛車・振り飛車それぞれのおすすめ戦法については、『将棋初心者向けのおすすめ戦法4選(居飛車・振り飛車別)ー 戦法と攻め方の基本』で紹介しています。

【将棋】将棋初心者向けのおすすめ戦法4選(居飛車・振り飛車別)ー 戦法と攻め方の基本
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今回は、こちらの記事の内容にも触れつつ、居飛車党・振り飛車党それぞれの勉強内容についてまとめていきます。

居飛車党の勉強内容

居飛車党は、相居飛車(お互いが居飛車の戦型)と対振り飛車(自分が居飛車で相手が振り飛車の戦型)の両方を勉強する必要があります。相居飛車については『居飛車党なら知っておきたい!相居飛車四大戦法の定跡と指し方』で詳しく解説していますが、最低限覚えておいた方がよいのは、角交換をした場合の指し方(角換わり)と、角交換をしない場合の指し方(矢倉など)です。

>>角換わりの定跡

>>矢倉の定跡

対振り飛車では、よく見られる振り飛車の指し方に対しての対策は覚えておく必要があります。振り飛車は大きく分けて2種類あり、角交換を拒否するノーマル振り飛車(ノーマル四間飛車・三間飛車・中飛車・向かい飛車)と、角交換をいとわない現代振り飛車(角交換四間飛車・ゴキゲン中飛車・石田流)です。ノーマル振り飛車に対しての指し方は四間飛車であろうと三間飛車であろうと似通っているので、合わせて4通りくらいの指し方についてはマスターしておく必要があります。

>>四間飛車対策の戦法

>>ゴキゲン中飛車の戦法

>>石田流対策の戦法まとめ

振り飛車党の勉強内容

振り飛車党は、先ほども少し触れたように、戦型の選択権があります。ノーマル振り飛車(ノーマル四間飛車・三間飛車・中飛車・向かい飛車)と、角交換をいとわない現代振り飛車(角交換四間飛車・ゴキゲン中飛車・石田流)の中から、1つか2つ、指しこなせるようになりたい戦法を選び、勉強します。人気の振り飛車党の戦法の定跡については、以下の記事で解説しています。

>>四間飛車の定跡

>>角交換四間飛車の定跡

>>向かい飛車の定跡

>>ゴキゲン中飛車の定跡

正直どっちでもいい理由

と、ここまでダラダラと語ってきましたが、正直なところどっちでもいい、というのが結論です。理由は、あとからいくらでも修正がきくからです。入門時には振り飛車党だったけど、今は居飛車党、なんて人もたくさんいます。

そんなに後から変えられるの?と不思議に思うかもしれませんが、初心者のうちは難しく見えても、少し将棋に慣れれば大体どの戦法も何となく覚えてしまいます。段を取れるようなレベルになると、たとえ居飛車党であっても振り飛車党であっても、何となく自分が指さない戦法もさせるようになります。それはいろいろな相手と指していくうちに相手の戦法も自然に覚えていくから。

なので、そこまでストレスフルになる必要は全くありません。というより、この時間がもったいない。戦法を選ぶ理由は自分の応援している棋士が○○党だから、とかそんな理由で構いません。もっと詳しい初心者にお勧めの戦法については、『将棋初心者向けのおすすめ戦法4選(居飛車・振り飛車別)ー 戦法と攻め方の基本』で紹介しています。

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初心者講座戦法
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日々頓死
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公開日:2021年3月3日