将棋を毎日3回は必ず指しているけど、なかなか勝てない..。または、今まで調子よく勝てていたのに、最近急に勝てなくなった…。これは、誰にでもある経験です。将棋の勉強を積み重ねてきたのに、なかなか勝てない。そんなときは、自分の勝てない理由を分析したうえで、勝てるようになるための適切な勉強法を試してみなければなりません。
将棋が勝てない4つの理由
「読む」ことができていない
将棋は、こちらがこうやったら、相手がこうやる、という風にお互いの手を計算していく、読み合いのゲームです。自分が今指そうとしている手が正しいかどうかを確かめるためには、指した後の展開を一手一手読んでいく必要があります。
序・中盤の段階では、例えば実際に相手に仕掛けていく時に「読み」を入れることが重要になります。でなければ、せっかく仕掛けても、相手にうまく受けられてしまった、といったような展開になりがち。例えば下図は、相居飛車の角換わり戦での、先手の角換わり棒銀です(参考:角換わり棒銀の基本定跡と攻め方)。
ここで、先手は銀を1五にでて、2四歩からの攻めを狙います。狙いは2六の銀と3三の銀を交換することで、相手の守りの銀を剥ぎ、銀を持ち駒にしてさらに攻めに使っていく点にあります。慣れている方にとっては簡単かもしれませんが、まだ何も知らない状態でこの攻めを考える際には、一手一手、「取って、取って、取って、打って…」などと言った感じで頭の中で駒を並べて、この攻め筋が成功するかどうかを考えておく必要があります。
→相手が何もしなければ▲2四歩△同歩▲同銀△同銀▲2四飛△2三歩▲2八飛で銀交換に成功
→△1四歩とされても、無視して▲2四歩△同歩▲同銀△同銀▲2四飛△2三歩▲2八飛でOK
こういった感じ。もう少し読みに慣れてくると、さらにこの後の展開(例えば銀交換をしたあとにどう次の攻めを組み立てるか、など)も読むことができるようになりますが、それまだ先の話。まずは、3手から5手程度の読みを、毎回指し手を考えるときに心掛けるようにしてみるとよいでしょう。逆に、指し手を決めるときに全く読みを入れずに勘だけで指していると、勝てるようにはなりません。事実、有段者以上になると序盤・中盤は感覚や慣れで、あまり読みを入れずに指す人がほとんどになりますが、最初のうちは一手一手読みを入れてさすことをお勧めします。
将棋に慣れていない
先ほども少し触れましたが、将棋を始めたばかりの初心者の方の勝てない原因を探してみると、まず単純に思いあたるのは「まだ将棋に慣れていない」という点です。これは上級者や有段者との大きな違いで、別の言葉でいうと、「感覚や慣れで指せるほどの将棋の経験が無い」といっても良いでしょう。単純に場数を経験していないため、「この局面ではこう指す」「序盤はとりあえずこうしておく」「こうやれば詰みそうだ」などの、感覚がまだ養われていないのです。
例えば、下図は(再び相居飛車で恐縮ですが)先手の矢倉に対して後手が左美濃で攻めかかろうとしている局面です。
ここから早速後手は攻めていくわけですが、ある程度将棋に慣れてきて、指し手のことが分かってきた人は、ここでは大抵△7五歩▲同歩△6五歩といった感じの手順で攻めていきます。具体的な定跡を詳しく勉強したことがなくても、①6筋から攻めたい②単に△6五歩とするのではなく△7五歩▲同歩を最初に入れておきたい、という点が分かるはず。こういった、定跡を暗記しなくても、長手数を読まなくても、何となく持っている感覚、というものがあると、大抵の局面では正解の手順または無難な手順を選ぶことができます。逆に、こういった感覚が備わっていないと、的外れな手を選んでしまうことになるのです。
定跡を知らない
序盤・中盤ですぐに局面が悪くなってしまう、という方は、定跡を知らずに指している場合があります。定跡は、先人の棋士が考えた序盤・中盤の指し方のガイドラインのようなもの。例えば四間飛車戦法を指したいのであれば、四間飛車戦法の定跡を覚える必要があります。こちらで紹介しているような四間飛車の定跡本を買って読んでみると、基本はこう攻める、相手がこうして来たらこう受ける、などとその戦法を指すうえで欠かしてはならないような情報が詰まっています。
定跡は、もちろん万能ではありません。実際の対局では定跡から外れたような展開になることもしばしばあります。しかし、そんな場合でも、定跡で学んだような駒の使い方の手筋などを応用することは可能です。
相手が強すぎる
将棋で勝てない根本的な理由は、自分ではなく相手にあるのかもしれません。将棋を指すにあたっては、極端に弱くもなく強くもない、おおよそ自分と同じくらい、または強いくらいの棋力の人を選ぶのがおすすめです。例えば将棋ウォーズであれば、対局相手の棋力を選ぶことができます。その設定がおかしくなっていないか、確認しておきましょう。「同じくらい」または「少し強い」がおすすめの設定です。
将棋に勝つための勉強法
読みの力を鍛える
まずは3手の読みができるようになる、これが一番大切です。3手の読みができるようになるには、3手詰にチャレンジしてみましょう。3手詰は自分が最初の一手を指す、相手がそれに対して応じる、そして最後の一手を指して詰ます、の3セットでできている詰将棋です。1問1問は簡単かもしれませんが、それらを繰り返していくことで頭の中で自然に駒を動かすことができるようになるはず。おすすめの詰将棋本については『【棋力別】おすすめの詰将棋本11選(初心者・級位者・有段者向け)のまとめ』で、詰将棋の勉強法については『【効率的勉強法】詰将棋で初段を目指すための正しい解き方と勉強法』で紹介しています。
3手詰は簡単すぎる、という方は、もちろん5手詰に進んでもらって構いません。ただし大切なのは長手数のものを時間をかけて解いていくのではなく、短手数のものを大量に解いていくことです。7手詰や9手詰などに手を出す必要はまだないでしょう。
将棋の感覚を身に着ける
将棋の感覚を身に着けるのには、対局数をこなすのも大切ですが、一番のおすすめは人の将棋を観てみることです。最も質が高いのはプロ棋士同士の対局ですが、そうでなくてもYouTubeに上がっているような将棋実況動画でも構いません。とにかく数をこなしていくことで、「この局面ではこう指すのか」などがだんだんと分かるようになってきます。
プロ棋士同士の対局を見るのであれば、将棋連盟公式の棋譜中継アプリがおすすめです。月額料金のあるサブスクリプションですが、指し手の解説が細かくついていて、とても分かりやすいです。棋譜DB2などでもプロ棋士の棋譜は見られますが、解説がついていない分「???」となるような手が多いので注意。
将棋連盟ライブ中継
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プロ棋士の棋譜はもちろん書籍で読むこともできます。こちらの記事でおすすめの自戦記や棋譜集については『【将棋】個人的におすすめな「自戦記」「棋譜集」まとめ【棋譜並べ用】』で紹介しています。
時間に余裕がある場合は、プロ棋士同士の対局をAbema TVなどで見てみるのもおすすめ。
>>将棋の対局(タイトル戦・公式戦)中継を見るための5つの方法
>>ABEMAプレミアムとは?無料トライアルの登録方法を解説
定跡を勉強する
序中盤ですぐに不利になってしまう、という方は、やはり定跡をしっかりと勉強するのがよいでしょう。自分の指す戦法の定跡をしっかりと勉強すれば、すぐに序盤で潰されることはなくなるはず。将棋の戦法についてはこちらの『戦法カテゴリの記事一覧』から確認できます。
また、まだ何の戦法を指したいかわからない、という方もいるかもしれません。そんな方は、こちらの『【将棋】将棋初心者向けのおすすめ戦法4選(居飛車・振り飛車別)ー 戦法と攻め方の基本』で戦法の基本を勉強できます。
ここでも初心者の方におすすめの戦法をいくつかピックアップしておくと、居飛車であれば「棒銀」や「右四間飛車」が、振り飛車であれば「四間飛車」がおすすめです。四間飛車は特に、有段者になってもずっと使い続けていられるような戦法。棒銀や右四間飛車は、「初心者向けの戦法」としての側面も強く、強くなるにつれて採用率は減っていきますが、それでも将棋の攻め方の基本をマスターするのにはもってこいです。
将棋の考え方とコツを学ぶ
最後に、将棋の対局で買っていくためには、将棋の考え方、すなわち「何をしたら有利になるのか」「何をしたら不利になるのか」を知っておく必要があるでしょう。「大局観」という言葉を使ったりもします。将棋の基本的な考え方や指し手を選ぶ際のコツについては、『【将棋の勝ち方】初心者が最初に抑えておきたい将棋のコツと考え方【大局観】』で詳しく解説しています。
また、将棋の考え方やコツにフォーカスした書籍は、『【将棋】絶対に身に着けたい「大局観」を磨くためのおすすめ棋書5選』の記事で紹介しています。羽生先生の「上達のヒント」は名著としても知られていますが、やや難易度は高めかもしれません。最初に読み進めるのであれば谷川先生の「本筋を見極める」がおすすめです。
まとめ
将棋でなかなか勝てない…というのは、誰もが(プロ棋士でも)持つ悩みだと思います。その中でも、特に初心者や級位者の「勝てない…」の原因は、今回紹介した4点に依るものでしょう。そして、それぞれの原因を解決するための勉強法(何をしたらいいのか)は決まり切っています。原因さえ特定してしまえば、あとは正しい勉強法を実行するだけです!!