囲いとは
囲いとは、一言で言えば王様の城。玉の初期位置は5九ですが、ここの位置のまま戦いを始めるのはとても危険です。なので、ほとんどの場合は序盤で玉をしっかりと囲ってから攻めていきます。将棋の囲いは駒の組み合わせだけ無限にありますが、主要な囲いというのは結構限られています。
今回は、これだけ知っておけば十分という将棋の主要な囲いを紹介してきます。自分が指す戦型の囲いはしっかりと覚え、自分は指さないけど相手にする可能性がある囲いについては特徴を押さえておきましょう。
囲いの基本
囲いの強さ
囲いの強さは、以下の3つのポイントで決められます。
・囲いの固さ(耐久性)
・囲いの広さ(バランス)
・完成までにかかる手数
・戦法との組み合わせ
まず第一に重要なのは玉の固さです。玉が堅ければ堅いほど強い戦いができますし、結果として守りではなく攻めにも効果を発揮します。しかし、囲いの完成までにかかる手数も考慮しなければなりませんし、さらに採用している戦法との組み合わせも重要です。
囲いと戦法の組み合わせ
囲いと戦法は密接な関係にあり、「この戦法にはこの囲いが良い」といったものが大体決まっています。
玉を戦場から離す意味で、居飛車は玉を左に囲い、振り飛車は玉を右に囲うのは当然として、それぞれの戦法に相性のよい囲いというのは限られています。相手が縦から攻めてくるのであれば縦からの攻めに強い囲いを採用しますし、相手が横から攻めてくるのであれば横からの攻めに強い囲いを採用します。
ですので、将棋を指す際にはまずどんな戦法を指すのかを決めて、その後にどんな囲いを選ぶのかを考える必要があります。
将棋の戦法については『将棋初心者向けのおすすめ戦法4選(居飛車・振り飛車別)ー 戦法と攻め方の基本』で解説しています。また、将棋の囲いの戦法の相性(組み合わせ)についても、『将棋の戦法と囲いの「相性」とは?囲いの選び方を徹底解説』で解説しています。
居飛車の囲い
居飛車の戦いは大きく相居飛車(自分も相手も居飛車)と対振り飛車(相手は振り飛車)に分けられます。大まかに、相居飛車では縦の攻めに対して強い囲いが、対振り飛車では横の攻めに対して強い囲いが用いられる傾向にあります。
相居飛車
相居飛車の四大戦法は、矢倉・角換わり・横歩取り・相掛かりの4つのこと。角換わりと横歩取りは特にメジャーな戦型です。
矢倉系
相居飛車で最もメジャーなのは矢倉系の囲いです。主に矢倉戦や角換わり戦で用いられます。特に角換わり戦では、角の打ち込みを防ぐ工夫を凝らしたような形が使われます。
カニ囲い
矢倉囲いに移行していく前の形。手数がかからないが、横からの攻めに弱い。 戦法:矢倉 手数: 固さ: 人気: |
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金矢倉
矢倉囲いの最も基本的な形。 戦法:矢倉 手数: 固さ: 人気: |
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かぶと矢倉
角換わりの戦いでよく用いられる矢倉の亜種。角の打ち込みに強い。 戦法:角換わり・対角交換振り飛車 手数: 固さ: 人気: |
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へこみ矢倉
かぶと矢倉と同じく、角換わりの戦いでよく用いられる。 戦法:角換わり・対角交換振り飛車 手数: 固さ: 人気: |
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早囲い
金矢倉に一手早く組むことのできる駒組。 戦法:矢倉 手数: 固さ: 人気: |
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片矢倉
玉を7八、金を6八に置く形。早囲いの形から発展してできることが多い。 戦法:矢倉 手数: 固さ: 人気: |
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雁木囲い
近年のソフト研究により流行。伝統的な5七銀型(上)と新型の4七銀型(下)がある。
戦法:矢倉・力戦 手数: 固さ: 人気: |
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矢倉左美濃
近年のソフト研究により流行。矢倉崩しの定番の囲い。 戦法:矢倉・力戦 手数: 固さ: 人気: |
バランス系
激しい戦いになることの多い横歩取りや相掛かりでは、玉を固く囲っている暇はないので、簡単な、でもそれでいてスペースのある囲いを作ることが多いです。固さこそないものの、陣形のバランスの良さと玉の逃げ道の広さを活かした囲いとなっています。
中住まい
横歩取りや相掛かりなどの激しい戦いで使われる囲い。玉は薄いが、左右に広い。 戦法:横歩取り・相掛かり 手数: 固さ: 人気: |
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中原囲い
横歩取りや相掛かりで用いられる囲い。中住まいよりも少し固い。 戦法:横歩取り・相掛かり 手数: 固さ: 人気: |
対振り飛車
対振り飛車の場合は、急戦と持久戦の差がはっきりとしてきます。急戦は文字通り速攻を目指す戦い方で、持久戦はじっくりと組み合って戦う方法です。
急戦
急戦の最も基本的な囲いは舟囲いと呼ばれる形です。このままで戦えば急戦になりますが、ここからさらに発展させて持久戦用の囲いに組んでいくこともできます。どの囲いを組むにせよ、基本的には舟囲いを経由します。
舟囲い
対振り急戦の基本の形。持久戦の囲いも舟囲いの形を経由する。 戦法:対振り飛車 手数: 固さ: 人気: |
舟囲いの形を活かした急戦の戦法としては、斜め棒銀戦法や4五歩早仕掛けが有名です。
持久戦
持久戦は玉をしっかりと固く囲う戦い方のことで、現在の主流です。大きく分けると左美濃型と穴熊型があり、どちらも非常に有力。穴熊系はノーマル(角交換しない)振り飛車に対して、左美濃系は角交換四間飛車やゴキゲン中飛車などの角交換振り飛車に対してよく使われる印象があります。
左美濃(基本形)
振り飛車で人気の美濃囲いを居飛車用に改良した形。 戦法:対振り飛車 手数: 固さ: 人気: |
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高美濃
左美濃の基本形から、金を6七に上げることで上からの攻めへの耐久性を増した形。 戦法:対振り飛車 手数: 固さ: 人気: |
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銀冠
銀をさらに玉頭へ上げた形。 戦法:対振り飛車 手数: 固さ: 人気: |
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端玉銀冠
玉を9八に動かすことで、囲いの遠さを活かす。端攻めに弱い。 戦法:対振り飛車 手数: 固さ: 人気: |
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天守閣美濃
端玉銀冠と同様、玉をもう一マス遠くに移動させる形。玉頭攻めに弱い。 戦法:対振り飛車 手数: 固さ: 人気: |
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居飛車穴熊(基本形)
対振り飛車で一番人気の囲い。固さと遠さが魅力的だが手数がかかり、端攻めに弱い。 戦法:対振り飛車 手数: 固さ: 人気: |
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4枚穴熊
攻めの銀を穴熊に引き寄せた形。 戦法:対振り飛車 手数: 固さ: 人気: |
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松尾流穴熊
6七の金と7八の金が特徴的。銀は7九に引き付ける。 戦法:対振り飛車 手数: 固さ: 人気: |
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銀冠穴熊
銀冠と穴熊を組み合わせたような囲い。ソフト研究で一気に有名に。 戦法:対振り飛車 手数: 固さ: 人気: |
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ミレニアム
穴熊が一筋ずれた形。振り飛車の角筋を避けつつ、穴熊同様固く遠い。 戦法:対振り飛車 手数: 固さ: 人気: |
振り飛車の囲い
振り飛車の戦いも相手が居飛車の対居飛車戦と相手も振り飛車の対振り飛車戦に分けられます。居飛車と異なり、対居飛車と対振り飛車で全く囲いの種類が違うということはありませんが、金無双や右矢倉などの相振り飛車でのみ用いられるような囲いも見られます。
なお、振り飛車の囲いは居飛車の囲いと比べるとレパートリーは少なめ。それもそのはずで、美濃囲いがあまりに優秀な囲いだからです。ただし、さらに固さを追求する意味で振り飛車穴熊が指されることもありますし、もちろん相振り飛車では金無双や右矢倉が優秀です。
美濃囲い系
本美濃
振り飛車の最も基本的な囲い。手数が関わらない割に崩れにくい。 戦法:振り飛車全戦型 手数: 固さ: 人気: |
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片美濃
本美濃の金を外した形。飛車が5筋にいる中飛車でよく用いられる。 戦法:振り飛車全戦型 手数: 固さ: 人気: |
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高美濃
金を4七にあげることで、上からの攻めへの耐久性を増した。 戦法:振り飛車全戦型 手数: 固さ: 人気: |
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銀冠
美濃囲いの発展の最終形。縦の攻めにさらに強くなる。 戦法:振り飛車全戦型 手数: 固さ: 人気: |
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ダイアモンド美濃
本美濃に左銀がくっついた形。滅多にみられないが、非常に美しい。 戦法:振り飛車全戦型 手数: 固さ: 人気: |
その他
金無双
相振り飛車でよく用いられる囲い。横に並んだ金が特徴的。 戦法:相振り飛車 手数: 固さ: 人気: |
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右矢倉
居飛車の矢倉を左右反転した形。上からの攻めに強く、相振り飛車戦で用いられる。 戦法:相振り飛車 手数: 固さ: 人気: |
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振り飛車穴熊
居飛車穴熊の振り飛車版。玉が固く遠い。 戦法:振り飛車全戦型 手数: 固さ: 人気: |
最後に
今回紹介したように、囲いには本当にたくさんの種類があります。初心者の方であったり、将棋を始めたばかりの方は、どの囲いを使っていけばよいのか分からないかもしれません。
そんな方むけに、『将棋の戦法と囲いの「相性」とは?囲いの選び方を徹底解説初心者におすすめの囲いを5つ紹介!簡単に組めて勝率UP!』では、初心者におすすめの囲いを全部で5つ紹介しています。ぜひ併せてご覧ください。
おすすめ関連書籍
こういったものはメジャーな囲い以外ではなかなか出ていませんが、囲いの守り方を知っているのと知らないとでは安心度が全然違います。囲いを勉強したは良いもののなかなか使いこなせていないような方におすすめです。